FIRE(経済的自立による早期リタイア)をすると、多くの自由を手にする代わりに「失うもの(損失)」があります。
そんな「損失」は4分類あり、「経済的損失・社会的損失・心理的損失・日常習慣的損失」というものです。
その分類ごと、17項目についての概要や対応策、所感などを綴ります。
FIREによる経済的損失
経済的損失とは、収入や金銭的な安定、制度的な恩恵など、生活の基盤に関わる「お金まわり」の損失のことです。
1. 定期的な給与収入
完全FIREをした僕は給与収入がゼロになりました。
FIREをすれば当たり前の機会損失です。働き続ける選択もできたのに、その機会を捨てたわけですから、定年までの残期間が逸失利益というものです。
つまり損失評価は2つあって、①その逸失利益を上回る「リタイアで得られるもの」があるか、②その損失を補填する不労所得なりの収入や節約による補填がどこまでできるかです。
前者については、リタイア時に「得るもの(ゲイン)と失うもの(ロス)の比較リスト」を作って考えました。結果、「得るもの>失うもの」だったわけです。
後者は僕は現役時代からずっと不労所得を作り、生活費の最適化(無駄ない家計)を作ってきました。
やはりこの損失には長期的に計画性を持って取り組むことも必要だと思います。もちろんセミリタイアによって少しばかり労働収入を得る方法もあります。
2. 社会的信用(クレジット審査・ローン)
会社員でないことによりクレジットカードの新規作成や住宅ローン(借り換え含む)の審査が厳しくなります。
僕自身は、こうした事態は予め想定し、リタイア時点では少し多めにクレジットカードも作り、不要なものをリタイア期間中に捨てるなど、やはり現役時代からやるべきことも多々あります。
3. 税制・制度のメリット(厚生年金・持株・会社補助)
リタイアと同時に厚生年金や会社の福利厚生がなくなることで、将来の保障が減る感覚がありました。
会社経由でのiDeCoは個人型に変更し、また年金は減免手続きをすることで働いていた頃より減るものの、でもリタイア後でも年金受給額は少し増えていきます。
ただ、FIRE後に年金の支払を減額や免除となると、iDeCoの積立ができない(維持はできる)という制約も出るので、どちらが有利か戦略的な設計も必要です。
この辺りは僕も実は失敗しています。
【悲報】手遅れ。アーリーリタイア時に国民年金の免除申請をしておくべきだった理由
持株会や会社補助(人間ドックなど)はFIREで消滅するので、会社での最後の人間ドックはいろいろオプションをつけてやりました。
いずれにしても、この項目は経済的な面で失うものが大きいとは思います.
4. 復職の難しさ(キャリアの断絶・ブランク)
職歴の空白やブランクにより、再就職が難しくなりがちです。
もちろん、FIRE後にスキル維持・学び直しなどの活動も良いかもしれませんが、「いつか働かないといけないかも」といった想定でスキルや資格を取るということは、その時間は魂を「労働的な人生」に売ってるわけです。
僕はやはり「FIREをした以上は一切、会社関連のスキルや知識は不要」と断捨離しました。
復職の有無の前提でFIRE生活が変わるということは、この立場にならないと、わからないものです。記事にもしました。
FIREによる社会的損失
社会的損失とは、肩書きや人脈、信用、評価といった「外の世界との接点」に関わるものです。
5. 社会的肩書き・職業名(アイデンティティ)
名刺に書ける肩書がなくなることで、自己紹介に戸惑うことがあります。
ということで、実は僕はFIRE名刺を作りました。
でも、その本当の目的は名刺そのものではなく、「サラリーマンではない自分はいったい何者か?」を考える重要な機会になりました。
この損失は、肩書や会社名(職業)を失くすということではなく、「自分は何者か=アイデンティティ」を再定義できるか否か、という問題です。
6. 会社を通じた人脈・つながり
会社員であれば、会社や仕事を通じた人間関係やネットワークができます。
FIREをすると、そうした人間関係が広がらないだけでなく、もともと会社で持っていた社内外の人間関係も自然淘汰されます。
これを「人間関係の損失」と考えるか「人間関係の品質(純度)アップ」と考えるかは個人の考え方次第でしょう。
事業家の友人のなかには「仕事をしていると友人が増える」と言う人もいますが(そのような関係もアリですが)、僕にとっては「仕事の利害だけでつながった関係より、個人としての信頼や魅力でつながる関係」を残したいと思っています。
なので、リタイア後に自然に人間関係が断捨離されたのは悪いことではありません。
とはいえ、FIRE後の仲良しだけの人間関係にも弊害はあります。
結局、損失か形の変遷なのかは、「人間関係に対し、自分の価値をどこ置くか」にかかっています。
7. 評価される場・競争の舞台
FIREによって職場での成果や評価の場が失われるため、達成感や自信が得にくくなることがあるかもしれません。
でも僕の感覚では、これは人生のステージで大きく変わるものだと思っています。
若い頃なら「承認欲求」という自分のなかにある器が満たされない限り、仕事、あるいは代替の何かで満たそうとするでしょう。
ですが、ある程度長く仕事をすると「承認欲求の器」が一杯になり、他人からの評価を得るとか、仕事を褒められるというのは、どうでも良くなります。そういった評価制度に合わせることこそ無意味で時間を無駄にする憂鬱の根源だと感じます。
【サラリーマン時代の憂鬱の根源とは?】リタイア後の1年間、〇〇が無くて初めて気づいた!
結局、評価される場や競争の舞台を失くすと捉えるか否かは、本質的には「承認欲求」が満たされたか、FIRE後も仕事以外で満たしたり補えるか、が重要な分岐点だと思います。
8. 出世や昇進といった明確な成長指標
FIREによって、目に見える昇進や肩書きアップという場が無くなります。
すると「成長実感」が得づらくなります。
これも承認欲求に近いものですが、自分が「成長したい」という欲求や向上心がある場合に、FIREによって、そうした成長の場を失うと感じるのか否かは、「何を求めて、どのような方向に成長したいか」によります。
つまり、会社や資本主義社会のルールに準じた成長を求めるか、自分自身の別方面での成長(視野を広げる、教養を身につける等)かによって、損失とみるのか転換とみるのかが変わります。
僕自身、成長というのは4方向があると思っています。
9. 世間体(親・親戚・古い価値観からの誤解)
親や親戚などの価値観により、親族からも(他人だけでなく)無職に対する否定的な見方がされることがあります。
FIREの目的や考えを丁寧に伝えても、価値観の違うものを受け止めて、理解してくれるとは限りません。
ちなみに僕の場合は、親に対しては「幸せに生きてるから心配ない」というボトムラインだけを伝えていて、事細かく、どうやって生計を立てているかなどは説明していませ。
なので、世間体といっても、相手が自分の幸せを願っての動機ならば納得してもらえるでしょうし、そうでなくて「社会からの目」を気にしてこうしたアンチFIREの主張をしてきたら、これは手ごわいといえます。
価値観の問題なので、これは難しいところです(僕はこの問題がないだけ幸運です)。
終わりに(途中)
以上、今回は前半戦として17個の「失うもの」のうち9個を挙げました。
今回は、経済的損失と社会的損失です。
引き続き、残り8個の「心理的損失・日常習慣的損失」を次回案内します。
やはり、損失するものが何かを網羅することは、FIRE後の後悔を避けるうえで重要なステップです。
是非、FIREを目指す人には、これら項目の意味を問い直すきっかけにしていただければと存じます。