FIRE(経済的自立による早期リタイア)によって「失うもの(損失)」として、17項目をリストアップしています。
今回の後半記事では、17項目のうち残る8項目について綴ります。
なお、大きくは4分類(経済的損失・社会的損失・心理的損失・日常習慣的損失)になりますが、この8項目は後半2つの「心理的損失・日常習慣的損失」に該当するものです。
前半記事で取り上げた9項目(経済的損失・社会的損失)はこちらです。
FIREによる心理的損失
10. 誰かの役に立っている実感(仕事上の)
仕事を通じて感じていた「人の役に立つ実感」が減ることで、空虚感が生まれることがあります。
ボランティア活動などに携わり、役立つ実感を別の形で得る方も多いようです。
ただ、僕自身はさほど仕事を通じて役立つという実感を求めもしていなければ、失ったとも感じていません。ただ、社会に役立つことは大事だと思っていて、FIRE後は以前よりも寄付を増やしました。
11. 働く頑張りで得られる自分肯定感
働くことには、程度の差はあれ「頑張り」が必要です。それによって、自分のアイデンティティ(自分らしくいること)や自己肯定感を保つ部分もあります。
ところがFIRE生活では、「頑張り」が無くなるので、自分を認められない(プライドの喪失)や、肯定できない(自己肯定感の喪失)といった心理になることもあります。
もちろん、仕事以外の何かで頑張れるものが見つかれば代替できるかもしれませんが、ある程度、FIRE生活前に仕事に対する人生観(=仕事観)について、自分なりに心の整理をしておく必要があるかもしれません。
これができないと、経済的にはFIREできても、心理的には喪失感が大きくなる可能性があります。
12. モノ消費の楽しさ(ストレス消費含む)
働く日々においては、ストレス発散として多少の贅沢な買い物をしてしまう人もいます。
ですがFIRE後は、こうした消費が家計に影響を及ぼすため、モノ消費を慎むことも必要になります。
それによってモノ消費の楽しさというものを失う人もいます(僕は該当しませんが)。
こうした消費を「体験」や「人との交流」にシフトすることで補うこともできるはずですし、お金のかからない趣味を持って楽しむことも重要です。
13. 仕事を終えたあとの“ご褒美”感
仕事である程度の負荷や頑張りを乗り越えたあとは、打ち上げの飲み会や、少し贅沢をするなど“ご褒美”を味わうことがあります。
FIRE後の生活は、こうした緩急がなくなるため、金曜日の夜にサラリーマンが集まる場所にいると、「頑張ったあとのご褒美」的な活気や状況をみて懐かしく感じることもあります。
とはいえFIRE後は「ご褒美」の質自体が変化していくので、こうした懐かしい感覚もすぐになくなってきます。
FIREによる日常習慣的損失
14. 時間的メリハリ(平日週末のオンとオフ)
FIRE後の生活では、平日と休日の違いが曖昧になり、曜日や時間感覚がぼやけがちになります。
ただ、僕の場合は曜日感覚を失っても困ることはありませんし、それを取り戻そうとも思いません。
1日のスケジュールのなかで、自分なりに緩急を入れる(スマホやPCから離れて散歩したり)、月1以上で旅行するなど、イベントベースでリズムを作ったりしています。
15. チームや組織に所属する感覚
サラリーマン時代には、仕事の関係者と連帯感を持ち、同じ目標に向かうことで得られる所属感や安心感がありました。
FIRE後は、「自分1人でいる」という感覚が強くなり、どこかに所属しているという感覚はまるでなくなります。
ただ、それを「孤独」といったマイナス面で捉えて損失とみるか、「自分だけで楽にいられる時間」といったプラスの獲得とみるかは、社会とのつながりをどれだけ求めるかによるのでしょう。
僕の場合、趣味や興味の対象が同じ人たちと集まるだけで十分なので、あえて社会的属性に拠り所を求めることはしていません。
16. 日常的なコミュニケーション(オフィスの雑談等)
サラリーマン生活では、同僚や知り合いと雑談ベースでコミュニケーションを取る場面も多くあります。
FIRE生活では、こうした「ちょっとした雑談」がほとんど無くなったと感じます。
もっとも、雑談を「面倒」と感じる人もいますし、人との軽い交わりをどの程度求めるかにもよるでしょう。
深い関係があれば日々の浅いコミュニケーションは不要だと感じる人もいますし、これも損失と見るか、面倒からの解放と見るかは人それぞれでしょう。
17. 社会の動きや時流のつながり(社会経済情勢等の感度)
会社を離れると、特に社会経済関連の情報には疎くなりがちです。
もちろんFIRE後もSNSやネットニュースを見ていますし、その時間はかえって増えました。
ただ、自分の興味のあるジャンルだけを追いかけると偏りも生まれやすくなります。
また、人が興味を持っている題材(自分が興味がないものも含めて)が自然に入ってくる環境ではなくなります。
僕の場合は、投資と絡めてニュースや経済指標への関心を持ち続けるほか、図書館に行ってランダムに本を手に取り、興味のない分野でも読むような工夫をしています。
終わりに
以上、今回の後半記事をもって、合計で17個の「失うもの」を挙げました。
それは、まとめると、
【経済的なもの
1.
社会的信用(クレジット審査・ローン)
2.
税制・制度のメリット(厚生年金・持株・会社補助)
3.
復職の難しさ(キャリアの断絶・ブランク)
【社会的なもの】
4.
社会的肩書き・職業名(アイデンティティ)
5.
会社を通じた人脈・つながり
6.
評価される場・競争の舞台
7.
出世や昇進といった明確な成長指標
8.
世間体(親・親戚・古い価値観からの誤解)
【心理的なもの
9.
自己肯定感や意義、モチベーションなど「心の充足」に関わるもの。
10. 誰かの役に立っている実感(仕事上の)
11. 働くことでの頑張りで自分肯定
12. モノ消費の楽しさ(ストレス消費含む)
13. 仕事を終えたあとの“ご褒美”感
【日常習慣的なもの
14. 時間的メリハリ(平日週末のオンとオフ)
15. チームや組織へ所属する感覚
16. 日常的なコミュニケーション(オフィスの雑談等)
17. 社会の動きや時流のつながり(社会経済情勢等の感度)
というものでした。
個別属性によって生じるもの(例えば、家族を持つ人が「FIREで家族との関係に変化」等)は取り上げず、一般的で共通するものだけに焦点をあてました。
是非、FIREを目指す人には、これら項目の意味を問い直すきっかけにしていただければと存じます。