僕が30代前半の頃、すでに「静かなる退職」を体現していた上司がいました。
周囲からは「まったく働かない課長」と言われていましたが、実際に一緒に働いていた僕にとっては学びの多い存在で、歴代上司の中でも最も要領の良い人物だった気がします。
そして不思議なことに、FIREをした今になって、その課長のことをよく思い出すのです。
今日はその不思議な体験を綴ります。
隠れ株式投資課長との出会い
その働かない課長は、ただ怠けているわけではなく、「業務中に株式投資をしているらしい」と噂される人物でした。
温厚で人と争うことはなく、表面上は仕事をしているように見えましたが、実際には部下に仕事を任せ、自分はパソコンを眺めていることが多かったのです。
僕が相談のために席に行くと、さっと画面を閉じる姿をよく見かけました。
当時はオンライン取引が広がり始めた頃で、きっと株価チャートを確認していたのでしょう。
意外に上手なマネジメント
その「隠れ株式投資課長」は、部長に対しては従順でした。
部長の無茶なオーダーもそのまま受け入れ、その仕事は僕に「ぶん投げ」してきます。
普通なら嫌われる行為ですが、なぜか僕には心地よく感じられました。
細かい指示をせず「好きにやっていい」と裁量を与えてくれる。報告をすれば要点を押さえたアドバイスを返してくれる。さらに、労いの言葉も忘れない。
一度、あまりに何もしないので「課長はなぜ動かないのですか!」と詰め寄ったことがあります。
すると、それまでパソコンに夢中だったのに急にこちらを向き、「わかった、僕ができることは何でもする。人が欲しい?予算が欲しい?」と、機嫌を取るように歩み寄ってきました。
その姿を見て「言っても仕方ないし、悪い人ではない」と思い、それからは突き上げることは一度もしませんでした。
外からは「働かずに部下へ押しつける課長」と見えたかもしれませんが、部長には従順に映り、僕にとっては自由を与えつつ、必要なときは動いてくれる上司に見えていたのです。
それは、「嫌われず、さりげなく気配りをする巧みなマネジメント」だったと思います。
熱い上司との対比
同じ組織には、もう一人印象的な課長がいました。
頭が切れ、部下思いで、上層部とも真正面から渡り合う熱い人物です。周囲の評判も「模範的」でした。
しかし、その熱さが裏目に出て、次第に組織で浮いてしまい、出世コースから外れてしまいました。
一方、隠れ株式投資課長は波風を立てず、上には従順、下には任せる姿勢で、組織の荒波を器用に避けていました。
二人を比べてみると、当時は「なぜ優秀な上司が飛ばされ、働かない課長が残るのか」と不思議に思いましたが、今振り返るとその隠れ株式投資課長こそ「世渡りが上手く、マネジメントにも長けていた人物」だったと理解できます。
最強の静かなる退職
振り返れば、その隠れ株式投資投資課長は大きな利益を得ていたはずです。
仕事でストレスを抱えることなく、会社ではそこそこのポジションまで昇進し、株式投資で資産も築いていたでしょう。
当時はパソコンのログ監視もなく、「静かなる退職 × ゆるいコンプラ」という時代背景に支えられた働き方だったのです。
そして僕自身も「細かく指示されるより、自由に任された方がやりがいを感じる」と気づくことができました。
外から見れば「働かない課長」でも、内側にいた部下にとっては「意外と良い上司」になるという、いわば、外の評価と内側の実感は必ずしも一致しない不思議な体験となりました。
終わりに
隠れ株式投資課長は、世渡りの巧みさとゆるいマネジメントを武器に、敵を作らず、自由を楽しみながら成果を上げていました。
ストレスなく資産も築き、部下には気づきを与える。
細かく指示を出したり、失敗すれば部下のせいにする上司より、むしろ「最強の静かなる退職者」だったと、今ではとても尊敬しています。
きっと今も、どこかで「のほほん」と暮らしているし、そうあって欲しいと思えるタイプの人です。
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