FIRE生活を送る上で、何を前提にするかによって、日々の生き方は大きく変わってきます。
中でも重要なのは、「この先も一切働かずに生きていくのか、それとも、いざとなれば再就職するか」というFIRE卒業を想定するかしないかという点です。
仮に、「FIRE卒業」として正社員に戻る可能性を見込んでFIRE生活を送ると、どうしても「自分が望む生活」から遠ざかり「再就職に有利(他者視点)な生活」になってしまいます。
今日はこうしたFIRE生活の基本スタンスとして再就職を想定しないFIREが大事な理由を綴ります。
再就職前提の「保険型FIRE」の落し穴
例えば、「いざとなれば働けばいい」と思っている人は、FIRE中も再就職に備えて資格を取ったり、スキルを維持する努力をしたりすることがあります。
一見すると堅実な選択に見えますが、実はこうしたスタンスがFIRE本来の自由さを狭めてしまうのです。
「これって再就職に役立つかな?」と考えながら動くと、いつの間にか判断軸が“自分”ではなく“他人の評価”になってしまいます。
結果として、「自分がしたいこと」ではなく「評価されること」に変わってしまいます。
実は僕も、FIRE当初はこの落し穴に気付かずにいました。
その思考を変えるきっかけとなったのは、3つの理由(①リタイア後は暇ではない、②仕事のためとの無意味な発想、③新たな興味や趣味の発見)でした。
FIREで得られるのは「時間」ではなく「価値観の再選択」
FIREで本当に得られるのは、単なる自由時間ではありません。
「自分が大事にしたいものは何か」と自問しながら、価値観を改めて見直し、自分の軸で人生を再設計して理想の暮らしを作る、そんな内省と実行を存分にできる自由がFIREの醍醐味です。
ところが、再就職を想定して生活していると、視野は狭くなりがちで、サラリーマン生活の延長線上でしか生きられないリスクとなります。
せっかくFIREをしても、得られる自由の質は半減してしまいます。
再就職は悪ではないが、前提にする必要はない
もちろん、完全リタイア後に再び働く道を選ぶのは悪いことではありません。FIRE生活が退屈だとか、仕事を通じて社会に役立ちたいと思うこともあるでしょう。
そう感じるなら、それは「働くことを止めるステージにはまだ来ていない」というサインとも言えます。
人生には、それぞれの“適したタイミング”があるはずです。
再就職を考えないFIREこそが、むしろ強みに
とはいえ、最初から「いざとなれば働く」という想定でFIRE生活を送るのは、もったいない生き方です。
「再就職は一切考えず、FIRE生活に全力を注ぐ」ほうが、得られるものが大きくなります。
面接官の立場に立てば、FIREでブランクがある人は、ずっと現役のサラリーマンに比べてスキル面で見劣りすることは否めないと、冷静に理解できるはずです。
仕事の一線から遠ざかっているので、スキルも知識も陳腐化するのは当然です。
それゆえ逆に「前職でどういった課題感があり、FIRE生活で何を感じ、どう考えを変えて、前職の課題もどう捉え直すようになったか」など、スキルを土俵としてアピールせずに、それを上回る経験値や挑戦があると、自分の言葉でアピールしたほうが武器になります。
実際、僕自身もそうしたキャリア上でブランクのある人(当時はFIREという言葉はなかった)を採用し、仕事で大活躍されたのを何人も見てきました。
終わりに
FIRE生活をどのように送るかは、「再就職を前提とするか、しないか」というスタンスによって大きく異なります。
もし「もうサラリーマンには戻らない」と決めているのなら、かつての物差しは手放し、自分だけの価値観で新しい人生をつくっていくことができます。
そして、仮に再就職を選ぶとしても、「戻らない覚悟」をもってFIRE生活を送った方が、「疑問もなく漫然とサラリーマンを続ける人」とは違ったエネルギーや視点をアピールできます。
僕のような50代FIREとなると再就職の事情は違いますが、まだ若い世代の方にとっては、そんな「思い切りのよさ」が最大の武器になると思っています。
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