FIRE(経済的自立と早期リタイア)を目指す人にとって、「いくらあれば足りるのか?」は永遠のテーマです。
ネット上では「4%ルールで25年分の生活費を用意すればOK」など、数字で語られることが多いですが、実際のFIRE生活を通じて見えてきたのは、「資産が多ければ多いほど自由になるわけではない」という逆説です。
むしろ、ある地点を超えると、資産の増加は自由度をむしろ下げてしまいます。
今回は、その理由と「自分にとっての最適額」の考え方を掘り下げます。
資産=自由、ではない理由
FIRE後の生活では、毎月の生活費を資産運用の利益や取り崩しでまかなうことが基本です。
そのため「資産が多いほど安全・安心」と考えがちですが、資産が増えるにつれ、「減らしたくない」という心理的プレッシャーが強くなることがあります。
たとえば、FIRE初期に「1億円あれば安心」と考えていた人が、実際にその金額を持ってリタイアしても、「本当に足りるのか?」、「予想外の支出があったらどうする?」と不安になったり、必要以上に節約するなどです。
さらに1億2000万円、1億5000万円と増やすうちに、「今度はこの資産をどう守るか?」という別のストレスであったり、「1億円=富裕層」といった世間の定義を意識して「富裕層から準富裕層に陥落したくない」といったことです。
精神的自由度とFIRE資金の関係
ここで1つのイメージを紹介します。
FIRE後の精神的な自由度(満足度)を縦軸に、資産額を横軸にとったときの関係性をグラフに描くと、実は直線的ではなく、「山の形」をしているように感じられるのです。
例えば、生活費300万円でFIREする場合、
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必要最低額(=25倍ルール等によるFIRE所要額=7500万円)では、その全額を投資運用に回すことになるため、精神的余裕が少なく不安を抱える。
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そこから徐々に資産が増えていくと、自由度も高まり、心の余白も生まれる。
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しかし、ある地点(たとえば1億円)を超えると、逆に「減らしたくない」「もっと増やさなきゃ」という別の欲や不安が頭をもたげてくる(前述の通り)。
つまり、資産が少なすぎても、多すぎても、それぞれ違った意味での不自由さが存在するのです。
FIRE資金の最適額は「最大」より「最適」
ではどうすればいいのか?
大切なのは、自分にとっての「ちょうどよさ」を見つけることです。
そのちょうどよさがわからないからこそ大変なわけで、とはいえ、以下の3つの視点をもとに考えると見通しが立ちやすくなります。
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生活費×年数で割り出す“最低限ライン”(例:年間300万円×30年=9000万円)
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リスクや不確実性に対応する“安心のバッファ”(例:医療・介護・家族などの変化)
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自分の生き方や価値観に合う“余白のための資金”(例:旅・学び・趣味・人間関係)
この3点を押さえたうえで、資産が自由を生みだす最大地点を見定めて超えないよう意識することが、FIRE成功のカギと言えます。
ちなみにFIRE生活を送りながら精神的な余裕を持てる資産額について検討した記事はこちらです。
なお、こうした安心のバッファや余白は、個人の心理、耐性、ライフスタイルでも変わりますが、やはり無策よりある程度の「想定」をもって実行することが賢明だと思います。
終わりに
FIREとは、本来「お金を使って、自由な人生をつくるための手段」です。
それがいつしか「資産を最大化するゲーム」になってしまうと、目的と手段が逆転し、せっかくの自由がストレスに変わってしまいます。
だからこそ、FIREの本質は、「いくら持っているか」より「そのお金でどんな毎日を送りたいか?」に目を向けて、資産の最大化より最適化を目指すのが正解だと思います。
数字に追われたり惑わされない、そんなFIREの人生設計が大事だと思います。
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