「静かな退職は迷惑です!」という読者の方からの声

2025-06-22

経済的自由・FIRE 仕事

t f B! P L

先日、こんなメッセージを読者の方からいただきました。

「私は”静かな退職”によって被害を受けています。最低限の仕事しかしない同僚の業務が『時間内に終わらないから』という理由で、上司から私に一部を引き取るよう指示されます。そんな同僚の“静かな退職”のしわ寄せが自分にきていて、とても不満です。WATARUさんが“静かな退職”を肯定されている理由がわかりません。」

このご意見は、先日の僕の記事に対する感想としていただいたものです。

「静かな退職」で人生が崩壊する人、しない人

今回はご本人(仮にA子さん)の許可を得て、「静かな退職(Quiet Quitting)」という言葉に込められた本来の意味と、日本の職場で生じやすい定義のズレについて綴りたいと思います。

「迷惑だ」と感じるのは自然~でも問題の本質は?

まず最初にお伝えしたいのは、A子さんの不満はまったくもって自然で正当なものだということです。

自分は責任感を持って働いているのに、隣の同僚は「必要最低限しかやらない」。その分の業務が自分に回ってくる・・というのは明らかに不公平で怒りたくなるのは当然です。

ただし、この問題の本質は個人にあるのではなく、組織構造やマネジメントの在り方にあります。

仕事の範囲や責任を明示せず、偏った負担を放置するマネジメント。あるいは、「できる人がやればいい」という暗黙の了解がまかり通っている風土こそが問題です。

だからこそ、不満の矛先を個人に向けるのではなく、制度や組織運営の欠陥として捉え、管理層に働きかけるべき課題だと僕は考えています。

その理由を少し紐解きたいと思います。

Quiet Quittingは「職務通りに働くこと」

「静かな退職(Quiet Quitting)」という言葉は、もともとアメリカで広まった概念で、与えられた職務(Job Description)の範囲内で働くことを意味します。

たとえば、営業職の職務(Job Descritpion)の例として以下があったとします。

  • 月50件の顧客訪問

  • 月20件の提案活動

  • 月5件の契約獲得

  • CRM入力と月次報告

この要件をきちんとこなしていれば、「最低限の期待された範囲を満たしている」状態です。

月5件の契約獲得は簡単で、能力的には倍の契約を獲得できるとしても、あえて上を目指さないで「最低限の期待値」をクリアーしている状態に留める・・それが静かな退職です。

事務職であればこういったパターンもありえます。

  • 毎日100件のデータを正確に処理

  • ミス率は0.3%以下

  • 問題発生時は即報告

なお、こうした個人の職務を達成することは「最低限求められるもの」で、その職務を満たせない場合、アメリカでは解雇の理由にもなり得ます。

なので「職務をさぼる→本当の退職」となるので、「職務だけは最低限全うする=静かな退職」なのです。

そうした背景なので、「職務記述書(Job Description)」はペーパー1枚に細かく明記され、上司と部下が期首に合意(サイン)し、職務上の基準として運営されます。

日本企業ではジョブ型雇用への移行が進んで過程なので、まだまだ職務定義が曖昧なケースが多いのが現実です。

そのため、「この人はもっとできるのにやらない」、「チームで困っているのに手を貸さない」といった、属人的な価値観や感情によって“最低限”が個々に判断されてしまうのです。

A子さんの職場も、まさにこうした混乱の構造にあるのだろうと推測しています。

本来は報酬と役割をセットで設計すべき

ただし、「静かな退職」がすべて正しいのかというと、僕はそう考えていません。

すべての社員が「言われたことしかしない」働き方になれば、組織の活力や変化対応力は確実に低下します

だからこそ、本来は「どこまでが職務なのか」を明確に定義し、その期待値を超えたらプラス評価でボーナスに反映したりする等、評価と報酬がセットで設計することが必要です。

たとえば、100件/日が求められるデータ入力業務で、ある社員が50件しか入力しなければ、それに応じてマイナス評価となり、給与も少なくなるのが自然です。

逆に、職務以上に貢献している社員は報われるべきで、そこに公平性や透明性がなければ、組織のモチベーションは持続しません。

終わりに

A子さんのご不満には、僕も深く共感します。

おそらくA子さんは、スキルが高く、責任感もある方だからこそ、「他人の仕事まで任される」状況になっているのだと思います。

しかし本質的には、その不満を「さぼり社員」個人に向けるより、職務が曖昧なまま運営されている組織の問題として提起すべきと、僕は考えています。

今の時代、すべての社員に「やる気」や「自己犠牲」を当然とするような組織運営は、もはや成り立ちません。

そして実は、A子さんご自身も「静かな退職」を選ぶ権利があると思います。

僕は、職務を全うしない社員の言い訳として「静かな退職」を肯定する気はありません。

A子さんのように、職務を全うしている人が、職務を超えて求められていることを拒否することができるわけです。

それこそが「静かな退職」というものです。

会社からの無理難題を引き受けることに一線を引く処世術として、A子さんご自身が「静かな退職」を採用する選択も良いと思っています。



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自己紹介

2022年3末に完全リタイア。FIREの自由で創る”自分らしいセカンドライフ” としてFIRE-Driven Lifestyle Innovationをテーマに、日々の気づきや経験を発信して精神的に豊かなFIREを応援します。
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