先日、ある記事を読みました。内容は「1億円を貯めた男性が、FIREを目前にしてなぜか踏み出せずに悩んでいる」というものでした。
記事のなかでは、入社後にFIREを目指して節約に励み要約計画通りにお金を貯めたがなぜかFIREすることに躊躇している、というものです(この部分は4コマ漫画)。
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この男性のエピソードを読んで、僕は少し違和感を覚えました。
というのも、彼は「FIREしたい」と言いながら、実際には「資産を増やすことそのものが好き」だったのではないか?・・という印象を受けたからです。
FIREのために1億円を貯める。それは確かに立派な目標であり、否定するつもりはまったくありません。
ただし、その目標を達成したなら、躊躇ばかりしたり判断を先送りせず、「それは本当に自分が求めていたものだったのか?」という問いを自分自身に投げかけ、答えを出すことは欠かせないはずです。
今日は、この記事をきっかけに、僕の視点から「FIREを目標にすること」について改めて考えてみたいと思います。
「お金を貯めること」が目的化してないか?
1億円を目標に貯蓄に励み、それを達成したあとに「さて、どうしよう」と立ち止まる人は、きっと少なくありません。
一見するとFIREのゴールに到達したように見えますが、実際にはそこが「本当のスタート地点」だとも言えます。
なぜなら、FIRE(とくにFI:経済的自立)は自由の土台でしかなく、「経済的自立を手に入れたあと、何を選択するか?」という自己決定が次のステップとして必要だからです。
記事の男性が「1億円を貯めたのに、なぜか踏み出せない」と躊躇している背景には、「FIREを目指していた」というより、「お金を貯めること自体が目的化していた」可能性があります。
世の中には、「お金を増やすことを目的にするのはよくない」という意見もありますが、僕はそうは思いません。
投資や資産形成が趣味であり、それが人生の充実につながっているのであれば、それは立派な生き方のひとつです。
ただ、必要なことは、その「自覚」の有無です。
この記事の男性の場合、自分が何を本当に求めていたのかにまだ気づけていない・・ということが問題だと感じます。
FIとFIREは似て非なるもの
FIREという言葉は、「FI(Financial Independence=経済的自立)」と「RE(Retire Early=早期リタイア)」を組み合わせた造語です。
多くの人がこの二つを混同してしまいがちです。
FIとは、「働かなくても生きていける状態」という土台であり、自由なる生き方の前提条件にしかすぎません。「自由になったあと、どう生きるか?」という問いはまったく別の話です。
僕自身、FIREして4年目になりますが、強く実感しているのは、「FIREした後のほうが、むしろ選択が難しい」ということです。
FIREによって訪れるのは、「誰にも決められない(自分でしか決められない)日々」です。
正解のない毎日のなかで自分が判断しないといけないわけで、そんな抽象的で拡散しがちな「自由」(あるいは選択肢が広いともいえる)から、自分の居心地よさや幸せにつながる選択を選ぶことで、はじめて正解が見えてくると思います。
「次は2億円を目指す」も自由。でも、それが本心か?
実際、この1億円を達成した人の前には、さまざまな選択肢が広がっているはずです。
・1億円で早期リタイアし、仕事からの「解放」を存分に味わう
・1億円で早期リタイアし、自分の趣味に没頭する
・1億円で早期リタイアし、起業や転職など新しいチャレンジをする
・さらに2億円を目標に、お金を貯める
どれも、本人が望んで選ぶなら選択できうるものです。
ですが記事の男性は「次に進めずに躊躇している」ことから、自己決定できていません。
そんななか、何も選択せずにずるずると緩やかに進みだし、心のどこかで「次は2億円を目指そう」と受動的に思うだけでは、本当の意味を見出せないままになるはずです。
そしてもし、「お金を貯めることが趣味」というより「お金に対する不安」が動機になっているのなら、それはまだ真の意味でFI(経済的自立)に達していないと言えます。
終わりに
FIREとは、「お金の自由を手に入れること」というより、「どんな選択もできるという状態に立つこと」だと、僕は考えています。
その先にどんな人生を選ぶかは、まさにその人次第です。
趣味に生きるのも、新しい仕事に挑戦するのも、再び資産形成に励むのも、すべてが正解になり得ます。
大切なのは、そうした選択肢の存在をきちんと認識し、そのなかから「自分の意志で決断すること」。
FIREにおける本当の自由とは、「自分に正直であること」、そして「自分の人生を自分で決める覚悟を持つこと」なのだと思います。
FIREは「経済的自立(FI)と早期リタイア(RE)」という言葉の組み合わせで語られます。
ですが実際にFIREすると、それは「経済的自立と精神的自立」がセットになっていると感じます。
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