FIREで後悔しないためには、「早期リタイアによる逸失利益」をできる限り数値化し、それに見合う価値を冷静に見極めて納得感を得ることが重要です。
逸失利益とは、たとえば「定年まで勤めていれば得られたはずの収入」や「社会的信用等」といった数値的・非数値的な利益全体を指します。
早期リタイアを選ぶということは、これらを手放す覚悟を持つことでもあります。
だからこそ、逸失利益を可視化し、それに代わって得られるものが何かを考え、「逸失利益<得られるもの」とすることが、FIREを後悔しない重要な判断軸になります。
今回は、僕自身のアーリーリタイア時の実体験を振り返り、「逸失利益を超える価値」について掘り下げます。
アーリーリタイア前の想定(逸失利益vs得られるもの)
FIREを決断するアセスメントとして、僕がリストアップした「逸失利益」と「得られるもの」を記載します。
逸失利益
経済的損失
・給与収入
・年金減少分(より早くリタイアすると受取額が減る)
・会社の福利厚生
見えない損失
・社会的信用
・会社を通じた自己実現
得られるもの
アーリーリタイア前に「得られるもの」として挙げたのは以下の7項目で、これらは「定年後では遅い」、「今やるからこそ価値がある」という視点で選定したものです。
*点数は、FIREから2年後に振り返って実施した自己スコア(どれだけできたか)です。
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今しかできない投資(85点)
知識と時間、好奇心を投じて、人的資本や情報感度の高いうちに動ける分野に取り組みたかった。 -
健康年齢のうちにしかできないスポーツ(75点)
体を動かす楽しさを“元気な今”こそ全力で味わいたい。 -
体力やハードシップを伴う旅(30点)
不便を楽しめるうちにこそ価値がある旅があると感じていた。 -
新しい技術や知識の習得(85点)
AIや環境技術、語学など、学びたいことが山ほどあった。 -
親孝行(90点)
時間は有限。親と過ごせる“元気な時間”を逃したくなかった。 -
友人・お世話になった人への感謝(50点)
ゆとりのある時間がなければ、感謝は形にならない。 -
自分ならではのビジネス(10点)
小さくても、自分だけのテーマで何か形にしたかった。
現在の所感
現在(FIREから3年後)は、これらの「得られるもの」の一部は満足するまでやり終えていたり、そもそも「得られるもの」というほど価値を感じないという違和感があります。
例えば、
・やり終えた → 投資(①)
・進行中だが十分にやった → 親孝行(⑤)、新たな知識習得(④)
・やる価値を感じられず方針変更した → ビジネス(⑦)
ちなみに、7のビジネスはもはや「自由投資予算」でのライフワーク的活動になっています。
このFIRE判断時に「逸失利益vs得られるもの」を初期検討したという記事はこちらです。
アーリーリタイアの決断の決め手~ゲインとロス分析(50代半ば)
この判断をFIRE2年後に振り返った(スコアリングした)記事はこちらです。
個人差はあるにせよ、そもそも、早期リタイアで失うもの(全17項目)はこちらです。
想定外だった「最も大きな価値」
しかし、実際にFIREをしてから丸3年が経過した今、強く実感するのは、上記では触れていない「精神的自由」の価値の大きさです。
これは、何をもってFIREをして幸せに感じるか、そんな「FIREがもたらした精神的満足感」で、例えば、
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自己決定権
何をするか、しないかを自分で決められるという感覚。 -
資本主義的土俵からの離脱
昇進・成果といった外部評価の圧から離れ、精神的な緊張がほぐれ、自分の軸で生きられるようになった。 -
時間の密度が変わる感覚
日常の濃さや、季節の移ろいに心を留められるようになった。会社員時代には味わえなかった時間の質。
これらはFIRE前には「存在自体に気づかなかった価値」であり、最終的には逸失利益を超えて、お金に換算できないぐらいの価値ある「得られたもの」になっていました。
終わりに~「本当の損得」は時間価値
早期リタイアによって被る「逸失利益」と「得るもの」を比較し、「早期リタイアで損がないか」とアセスメントしたのがFIRE直前のアプローチです。
「得るもの」と期待した7項目も、サラリーマンをやりながらの「すきま時間」ではやりきれないレベルで実施でき、その満足感は大きいものです。
ですが本当に得られたものは、「お金に換算できない(類いの)ものごと」です。
それはFIREで得た「人生の残り時間」で、会社の利害を優先した時間ではなく、自分が本当にやりたいを主軸にしたリタイア生活へと「構造転換」した感覚です。
やはり、お金という資産は努力で増やせますが、時間という資産はただ一方的に減っていく希少なものです。
だからこそ、減りゆく「残り時間の全体を自分仕様に再設計」し、「精神的自由・時間の使い方・人生への納得感」を高められたことが、お金では買えない価値であり、FIREの真価だと感じます。
そんなFIREに後悔なんて微塵もありません。
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