富裕層を対象にした金融サービスの変化が起きていて、今の時代は「いかに富裕層になったか」がより問われるようになっています。
「いかに」というのは、例えば起業で成功した人、相続で資産を得た人、投資や投機で築いた人、専門職や外資系企業で高収入を積み上げてきた人、地主として不動産を所有する人・・など、実に多様です。
今日は、記事をきっかけに、こうした動きについて僕自身が気づいた点を綴ってみます。
富裕層が多様化した背景
記事によると、野村證券が資産「5億円以上」の超富裕層に特化したサービス展開を進めるなか、中間層向け富裕層ビジネスが新たな主戦場として浮上しています。
野村が捨てた「資産3億円未満」を狙え SMBC×SBIが狙う“新興富裕層”の正体
かつての日本で富裕層といえば、地主や企業オーナーなど、資産を継承したり所有したりするケースが中心でした。
しかし今では、起業によって短期間で資産を築いた人、専門職や外資系勤務で収入を積み重ねてきた人、長期の投資で資産を増やした人など、その到達ルートは格段に多様化しています。
同じ「資産1~3億円」という括りであっても、その裏にある人生の歩みや価値観は全く異なるのです。もはや「富裕層向けサービス」と一括りにできる時代ではなく、属性ごとに理解やアプローチを設計する必要があるのだと感じます。
成り立ちによって異なるニーズ
成り立ちが違えば、当然ながら求める助言も違ってきます。
例えば、代々の資産家は「資産保全」や「相続対策」を重視するでしょう。一方で、起業家は「次の投資機会」や「事業との相乗効果」など事業発展への投資に関心があります。高収入を積み重ねてきた専門職は「効率的な資産運用」や「限られた時間を節約できる仕組み」を求めがちです。
つまり、資産額は同じでも、背景によってニーズは大きく異なります。
しかも富裕層とその家族をライフタイムのおつきあいで「囲い込む」という戦略が高まるなか、プライベートバンカーも、お金の問題だけでなく教育や旅行、健康、ライフスタイル全般にまで広がるテーマを扱うようになりつつあります。
中立性と信頼の確立がカギ
こうしたニーズや市場の変化で大事だと思うのは、やはりアドバイザーやコンサルタントの姿勢です。
その際、短期的な視点にたって「自分(売り側)の利益>ユーザの利益」となれば、顧客に最適な提案はできません。なのでむしろ「長期的な信頼を得るためにユーザを優先する」という「自分<ユーザ」の姿勢が不可欠です。
ところが営業目標を追う現場ほど、このユーザ志向、長期的信頼を軽視して、「短期で利益をあげる」の姿勢になりがちです。
富裕層は経験豊富で多様な選択肢を知っているので、こうした口先だけ、自分優先の営業トークはすぐに見抜かれます。なので中立性も重要です。
富裕層の中にいるアドバイザーの可能性
さらに言えば、コンサルタント自身が富裕層でなければ、本当の意味でのニーズを理解するのは難しいのではないかとも思います。
サービス業界全般にいえることですが、提案者が自分ではサービスを利用したこともないのに「これは良いです」と言っても説得力に欠けます。
富裕層は成り立ちが多様化している分、その目線を理解し、共感できることが一層重要になっていくでしょう。
そう考えると、セミリタイアして時間に余裕のある富裕層が、自らアドバイザーとして活動するような形もありえるわけですが・・・が、そうしたことをしたい人材もいるとは思えません。
なので、富裕層同志で信頼できるコミュニティーを作って、そこで情報交換をするというスタイルが続いてしまうのでしょう。
やはり富裕層の属性を攻略するのも大変なマーケットだと感じます。
終わりに
記事から見えてきた金融サービス各社の富裕層向けビジネスも、「富裕層」とひとまとめにできない多様性がそこにあります。
やはり富裕層への成り立ちごとに異なるアプローチが求められるという現実も大きいと感じます。
さらに「ユーザのニーズを心底理解し、中立的に助言できる存在」も重要ながら、サービス提供側がそうした営業の仕組みや人材確保も容易ではないと思います。
などんど・・ありますが、一傍観者としては、様々なルートで富裕層が生まれるという広がりは、本質的には悪い話ではないと見ています。
↓