気楽なアーリーリタイア生活をする僕が1つだけ背負ってる宿命があります。
それは「欲にまみれた人のお金」の管理です。
なにしろ「野心、地位欲、権力欲、財産欲、承認欲求、成功欲」。
そんな欲まみれの「父からの遺産相続金」を受け取りたくないからです。
僕自身の資産管理口座とは別のところに置いているのです。
成り行き
戦後の高度経済成長のなか、会社で順当に出世していった父でした。
豪快でリーダーシップがあり、面倒見が良いタイプですが、とにかくお金にルーズで、口達者なワンマンで、利己的な父でした。
そんな人間性ゆえ、僕は父からの相続はしたくありませんでした。
ただ、一連の相続対応で、いまはそのお金をある方法で「昇華」するよう進めています。
尊敬するところはあったが、許せる気持ちはありませんでした。
そんな父と同じように僕もアーリーリタイアし、心のなかで折り合いがついてきたので、今の気持ちと計画を明文化することにしました。
アーリーリタイアをした父の起業
父は50代半ばでリタイアし、自己資金と友人や親戚から出資で小さな商社を設立しました。
見栄もあってか、都内のターミナル駅から徒歩範囲のマンションにオフィスを構えました。
家具からオフィス機器もお金をかけて一通り揃えていました。
設立記念だと言って、盛大な飲み会をやり、大学生だった僕も参加しました。
当時、まさかその後の展開がこうなるなんて、夢にも思いませんでした・・。。
大企業っぽく会社経営する「会社ゴッコ」
そんな、毎月の固定費だけで数十万とかかる高コストの会社経営。
最初こそ、勤めていた会社からのOB枠としての発注や、その紹介でそこそこ潤っていたようです。
仕事がうまくいっても、いかなくても、接待です。
接待は大得意で、天性のスキルがあると僕も認めます。
銀座の行きつけの寿司屋に連れていっては接待をし、そこの大将にもお酒を飲ませ、話を盛り上げます。
とにかく大盤振る舞いで、「いよ~、社長」なんて言われると、機嫌が良くなって「どーんとこい」と、一番高い日本酒やら1貫4桁の寿司ネタも頼みますからね・・。
そして帰り際には「奥さんにどうぞ」と「手土産の寿司」までこっそり準備しています。
ビジネスの有無より、ノリが良い(社長と持ち上げてくれる?)相手を接待していた気もします。
僕には「会社ゴッコ」にしか見えませんでした。
転げ落ちる15年の日々
OBとして顔が効くのも時間制限があり、やがて会社側も担当が変われば、取引も切られていきます。
一方で、父親の人間性は変わりません。
相変わらず、大企業かのような接待で飲み食いにお金を費やします。
そんなやり方では、やがて会社の運転資金が枯渇します。
運転資金が枯渇した時の対処は、個人の貯蓄から「会社に貸付」をしていました。
個人の貯蓄を使い果たすと、今度は複数の銀行からの借入金です。
それも足りなくなると、さらに個人のクレジットカードのキャッシングです。
カードは5,6枚作っていたようで、全て上限まで借りては、毎月、分割返済しています。
そんな明細書が机の上に放置されているのも見たことがありました。
人間弱ると更なる不幸に遭遇しやすい
ある年の12月の中頃に、父から「やっと良いビジネスが回ってきた。これでよい年を越せる」と連絡がありました。
僕は「そんな運が急に来るものか」と妙に気になっていました。
数日後、ノベルティー商品を納めた先のその企業がトンずらする詐欺だと判明しました。
父曰く「おかしいとは思い、取引を決める前夜に相手企業の住所にいくと、ビルもあった。そこに大きな看板も出ていて信頼できると油断した。料金後納で取引した。」と。
そんな「調査」があることは詐欺する相手企業だって想定内でしょう。
人間、追い詰めらるとダメですね。
追い込まれて人間性が露わに
会社はますますピンチです。
でも、本人の人間性は変わりません。
もはや父は、「社長~」と言われる地位や権力が居心地良く、「人の金で続く限り仕事をして、ひと山当てればラッキー」という、意地汚無さで生きているようにみえました。
クレジットカードも金融機関の枠も使い果たし、個人のツテで親戚友人から借りるだけ借りています。
僕も弟も、それなりの金額は貸し付けていました。
他にも、親戚、友人などあらゆるツテを、いつもの営業力と口達者さで口説き落とし、お金を借り入れる。その額は1千万円は近くありました。
それをクレジットカードや銀行の借入金返済に回しながら、ぎりぎりのやりくりで会社を延命させていました。
ある日、こんなやりとりをしました。
僕が、会社の固定費を下げて節約するよう、家賃の安い場所に引っ越しをすることを進言しました。
すると父は「そんなチッポケな場所に移っていては、発想も縮小し、成功なんかできはしない。節約、節約、と守りの姿勢で勝てるわけない。だから貴様はダメなんだ。やるだけやってダメなら、俺は浮浪者にでもなる。」
もうハチャメチャです。
僕にとって許せないのが、たとえ売り上げがあがっても、自分の飲み食いを優先し、借金返済に充てようともしない、そんな誠実さや良心のなさです。
会社倒産と自己破産
やがて運転資金がなくなり、会社は倒産となりました。
金融機関の借入金も返済できず、約束手形も不渡り。
金融機関の取引制限となり、終焉を迎えてしまったのです。
当然、父親が個人として借入れしているカードローンも、個人的な親戚や僕からの借金も返済のあては無く「自己破産」となります。
法テラスを経由して、会社の倒産と自己破産の両方を、いっぺんに進める手続きを弁護士さんと僕で進めました。
その一切を労力も金銭的サポートもしました。
人間の欲とは
野心、地位欲、権力欲、財産欲、承認欲求、成功欲。
欲を持つことはいけないとは思いません。
ただ、そんな自分の欲を優先し、母親に苦労をかけても気にかけず、他人からの借金も返済する気もなく、踏み台にする。
そんなことが僕は許せなかったのです。
会社経営だって、やってはいけない基本的なことを、さんざんとやっていました。
うまくいく要素はありません。
こんな「金・地位・名誉」といった欲が、人の人生を狂わしてしまう一部始終を見てきました。
人生、それで終わらない
ただ、人生はこれで終わらないところが不思議なところです。
その後、年金生活をしながら大人しく過ごしていた70代後半。
父は、個人事業主として、現金取引のみ、前金のみでビジネスを細々としていました。
もしかしたらそんな「欲」がなくなったせいか、「奇跡の一発」をビジネスで当ててしまいました。
そこがさらに、父と僕が確執を生むことになり、この遺産相続問題へと発展します。
ということで、前半はここまでとさせてください。
(前半完)
なお、関連記事として、FIRE資金視点でこの一部を綴ったのがこちらです。
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