「FIREの必要額は生活費25倍」の落し穴(1/2)

2025-07-05

リタイア後の生活費 経済的自由・FIRE

t f B! P L

FIRE(経済的自立と早期リタイア)を考えるとき、「生活費×25倍」という計算式は多くの人が目安として使っています。

この式は一見シンプルで、使いやすいモデルですが、そこには意外と語られない落し穴があると僕は感じています。

よく言われる「インフレを考慮していない」とか「米国経済を前提にした数式」といった指摘ではありません。

もっと実践的で感覚的な見落としやすいポイントです。

今回はそのひとつめ、“生活費”という数字をどう設定するかについて綴ってみます。

「今の生活費」をベースにしていないか?

FIREを目指すとき、多くの人は「今の自分の生活費」に25倍をかけて、必要資産を算出しようとします。

ですがこの「今の生活費」は、本当にFIRE後の生活にそのまま適用できるものでしょうか?

会社員として働く日々では、平日は仕事に追われ、夜は食事と風呂と少しの趣味で終わることもあります。休日も疲れを癒すことに使われ、活動範囲も出費も限られたりします。

このような日常の中で構成された生活費は、言ってみれば「時間がない前提」で成り立っている支出です。

一方、FIRE後は時間が自由になり、アーリーリタイアであれば体力もあるため、活動の選択肢も広がります。

暮らしの質が変われば、支出構造も変わるのは当然のことです。

25倍をかける「生活費」は理想の暮らしで考える

この点から考えると、25倍という式を使うにしても、基準となる「生活費」は「今」ではなく「これから送りたい暮らし」を想定して見積もるべきです。

たとえば、現状の生活費が月30万円であれば、多くの人が30万円×12ヶ月×25倍=9,000万円と計算するでしょう。

しかし、FIRE後は趣味や旅などへの出費が増えると想定し、月40万円かかると見積もれば、必要額は1億2,000万円に増えます*。

同じ25倍ルールでも、基準とする生活費の見積もりによって、目標資産額に数千万円の差が出てくるわけです。

*FIRE必要額(生活費となるベース)は家族構成や生活環境等で変化します。あくまで違いを表すサンプル数値です

もちろん、自由に平穏に暮らすことがお金がかかるとは言えないので、現役時代にお付き合いだ、奢りだ・・と交際費が多めの人は減るかもしれません。

「生活費」を分解するという発想

そんな「FIRE後の理想の生活費」をどう想像すればよいのでしょうか?

僕が有効だと感じているのは、生活費を「基礎生活費」と「ゆとり費」に分けて考えることです。

基礎生活費とは、住居費、食費、光熱費など、生活の土台となる支出です。

ゆとり費は、旅行、趣味、教養活動など、生活に潤いや刺激を与える支出です。

つまり、サラリーマン時代はお金を増やすために「貯蓄率(収入に占める貯蓄の割合)」を見ていたように、リタイア後はお金を使って経験や楽しみといった「ゆとり」の比率を見ることです。

つまり、ゆとり比率(生活費に占めるゆとり費の割合)でありゆとりへの配分をもって、「理想的な生活」という感覚の手掛かりにする方法です。

生活費を二分する狙い

なお、このように生活費を二分して管理する狙いは、最悪事態をコントロールすることでもあります。

万が一、資産運用が破綻しかければ、ゆとり費(自分にとってはリタイア生活の投資的位置づけ)を全て削り、基礎生活費でやりくりすれば良いわけです。

つまり、「ゆとり費=削減上限額」とし、収支管理でも明確にその弾力幅を把握できます。

基礎生活費そのものは現役時代とほぼ同額(僕の場合)なので、基礎生活費に手を入れない限り「生活が苦しくなった」とは思わないはずです。

僕のゆとり比率

そんなゆとり費率の公式は次の通りです。

ゆとり比率 = ゆとり費 ÷ 総生活支出× 100

僕の場合、「ゆとり比率>50%」として、「総生活支出の半分はゆとりに使う」ことをもってリタイア生活を最適正しています。

現役時代は「ゆとり比率=20%」でしたが、それが「FIRE後=50%」に増えているのは、特にいまの健康年齢でなるべく多くの体験へ投資したいという思いからです。

ちなみに、僕の区分するゆとり費には、

・娯楽費(外食、遊び、交遊等)

・交際費(家族等の大切な人への支出)

・旅費

・自動車費(マイカーにかかる費用)

・教育費(習い事や資格取得など自分のスキルを高めるためのもの)

となっています。

FIRE後の「ゆとり比率」を分析した(2024年実績)

終わりに

「生活費×25倍」という式は、FIREを考えるうえでシンプルで便利な道具です。

ただ、どうしても「25倍」を貯めることに必死になってしまい、もう一方の「生活費」を割と疎かにしてしまうというのが、FIRE前の大きな落とし穴です。

FIRE生活は現役時代とは違った「もうひとつの違う人生設計」になるので、その設計で使う「生活費」も「今」ではなく「これから」の暮らしに合わせて描くのが大事と思います。

次回は、もうひとつの落し穴・・・「25倍という数字だけで安心してしまうこと」について自分の経験も交えて綴ってみたいと思います。

「FIREの必要額は生活費25倍」の落し穴(2/2)

 

ランキングも参加してます。参考になる部分がありましたら、ぜひポチっとしていただけると励みになります。


にほんブログ村 ライフスタイルブログ セミリタイア生活へ
にほんブログ村



自己紹介

2022年3末に完全リタイア。FIREの自由で創る”自分らしいセカンドライフ” としてFIRE-Driven Lifestyle Innovationをテーマに、日々の気づきや経験を発信して精神的に豊かなFIREを応援します。
PVアクセスランキング にほんブログ村

このブログを検索

QooQ