FIRE(経済的自立と早期リタイア)を目指す人の間では、「FIRE後にやることは決めておいた方がいい」というアドバイスをよく耳にします。
たしかに理にはかなっています。仕事という枠を外れた途端、何をすればよいのか分からなくなるという不安は誰にでも起こり得ます。
しかし、FIREを経験した感覚でいえば、「やることを決める」よりも、「やりたいことに気づける状態を整える」ほうが持続性や発展性もあり有益だとも感じます。
今回はその理由を綴ります。
「決める」は未来を縛るリスクがある
FIREの本質は「物理的・精神的な自由を取り戻す」ことです。
なにしろ会社員時代は「効率性」や「合理性」を求めるあまり、「目標」を定め、「やるべきこと」を洗い出し、そこに優先順位もつけるわけです。
こうした習慣が正しいという感覚で、「FIRE後にやること」を予め決めてしまうと、逆に自由を狭める可能性があります。
なぜならそれは、「未来の自分」を「今の自分」の視点で縛る行為ですし、「今の自分」もFIRE前(リタイア生活の体感なき状態)における不確かな決定でもあります。
例えば、「FIRE後は英語を学び直す」と決めたとしても、他にもっとやりたいことが出てきたとき、「でも英語やらなきゃ」と義務感に縛られてしまうかもしれません。
それは会社員時代の「〇〇すべき」と変わらない構造で、自分に義務を課して他の可能性を狭めてしまうからです。
本当に大切なのは「気づきの感度」
FIRE生活で僕が驚いたのは、「やりたいことが自然と次々見つかる」ということでした。
事前に計画していたものではなく、偶然の中で「ふと気づいたこと」から始まりました。
例えば父の遺品から出てきた納経帳を見て、未完成の朱印を自分で埋めようと思ったことが、四国巡礼のきっかけに。そこからしまなみ海道のサイクリング、さらに他の土地への旅へとつながっていきました。
また、知人の空き家相談をきっかけにDIYに挑戦したのも、思いがけない偶然から始まったものでした。
サラリーマンの頃のマインドは「仕事もあるから疲労や面倒を避けたい」とか「限られた時間でこれは無理」と、無意識に可能性を排除していました。
それがFIRE後に無くなり、「健康・時間・お金」の余裕が可能性に気付いたり「やってみよう」という気を起こさせます。このカラクリは以前の記事にも書いています。
「やることを決める」は限定的な処方箋
もちろん「FIRE後にやることを決めておく」が有効な場面もあります。
それはFIREという「手段」が「目的化」してしまったケースです。
FIREを目標に努力を重ね、いざFIREを達成すると虚無感に襲われる・・といった燃え尽きた状態のことで、再スタートをスムースに切るためにも予めやることのプランを持っておくというケースです。
ただそれも、燃え尽き後の放心状態を防ぐ一時的な処方箋にすぎません。
いくらやりたいことをリストしていても、FIRE後も数年たてば、また新たにやりたいことを見つけていくことが必要にはなるからです。
必要なのは「感度を整えること」
以上の通り、FIRE達成後に重要となるのは「やることのリスト」の完璧さというより「やりたいことを見つけられるオープンな心持ち(=感度)を整えること」です。
そうした「心の余裕」をつくることですが、具体的な方法としては、
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十分な睡眠や運動で、まず心身を整える
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「目標を持たないといけない」という思考を手放す
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一見無駄に思えることに、あえて心を向ける
ということです。
すると「感度の高い状態」に自然となってきて、やみくもに「やりたいことを見つけよう」としなくても、自然にやりたいことが見つかるので、有効性も永続性も高いと感じています。