FIRE後は「お金を使う感覚」、いわゆる経済観念が変化します。
経済観念とは、「お金の使い方・貯め方を支える、その人らしい感覚」のことです。
サラリーマンの頃は、「給与」という明確な基準があり、「基準を超えて支出したら赤字」とか「貯蓄は収入の〇〇%」と、すべてこの給与収入がベースになっていました。
しかしFIRE後は、給与に代わって資産所得(配当・利子・不動産収入など)が柱になりますが、それは変動が大きく予測しにくいものです。
よって「新しい内的な基準」をもってお金の使い方を制御します。
今日は、僕がFIRE生活で実践している「内的な基準」について綴ります。
なお、結論からいうと、①数値的健全性、②精神的健全性、③方向的健全性、という3つのバランスで考えています。
①数値的健全性~「破綻しないこと」
FIRE生活を送る上で、まず何よりも重要なのは「お金が尽きない」ことです。
これは当然ながら、FIREという生き方の根本的な前提になります。
僕が実際に取り組んでいるのは、以下のようなシミュレーションです。
資産寿命のシュミレーション
経済恐慌での暴落シナリオ(資産毀損率)のシュミレーション
こうした「数値的な限界ライン」を感覚として持っていることが、精神的な安定にもつながります。
逆にここが曖昧だと、どんなに自由な時間があっても、心が落ち着かない生活になってしまうでしょう。
②精神的健全性~「使っても不安がないこと」
FIRE後の収入は不安定で変動が大きいため、「いくら使ってよいか」ではなく、「どこまで減っても不安がないか」が精神的な健全性の軸になります。
そこで、経済恐慌等の不況時に「投資中の資産が〇〇%減となったとして、自分が精神的に受容できるリスクラインは幾らか?」をシュミレーションしました。
そこで設定したのが「精神的に受け入れられる資産の下限ライン」です。
具体的には、僕の資産の約80%は投資にまわしており、それが仮に最大で3割毀損すると、投資部分は56%にまで下がります(80% × 70% = 56%)。残る20%は現金や安全資産として確保しています。
この場合、資産全体が76%に減ったとしても、自分が耐えられるラインを下回らないよう支出や投資リスクを管理する、という発想です。
また、「使わなさすぎる」生活を送っていてもFIREの意味が無くなってしまいます。
そこで、結果的にはサラリーマン時代の支出額より3割増しの月次予算を設定し、積極的に使う設計をしています。
これは「基礎生活費+ゆとり費」という生活支出のうち、「基礎生活費<ゆとり費」となるよう、つまり「ゆとり比率を50%以上にする」と支出をコントロールしています。
これが自分の生活品質(QOL)を実感させてくれる基準値にしています。
このように、「下限(不安)」と「使う喜び」の両面を意識することが、精神的な健全性につながっています。
③方向的健全性~「意味ある支出かどうか」
最後に大切なのが、「何にお金を使うか?」という方向性の健全性です。
FIRE後は、自由時間が増える反面、使い方によってはお金が「浪費」にも「投資」にもなり得ます。
僕は「方向的健全性」として、以下のような基準で支出を判断しています:
自分の価値観・人生観に即しているか?
時間・人間関係・経験の質を高めているか?
自己満足や達成感につながっているか?
具体的には、「ゆとり費」としての旅費・交際費・健康への投資などが価値観に即し、生活の質を向上させ、満足感になっています。
加えて、2024年からは「自由投資予算」という新しい枠組みも設けました。
これは、生活費とは切り離して、「面白そう」「やってみたい」と感じたプロジェクトに、意図的にお金を使っていく別予算です。
例えば、空き家のリノベ、子供との株式投資の共同実験・・・など、いろいろとプロジェクトが進行中です。
FIRE後の経済観念の変化ーまとめ
この3つの軸を持つことで、FIRE後の「基準なき世界」でも迷わず自分の判断に納得できるようになっていきます。
つまり、FIRE後には外的な基準ではなく、自分の内的な軸を再構築する必要があるということです。
表にするとこうなります。
終わりに
FIRE後の生活では、給与収入のような「わかりやすい基準」がなくなるからこそ、自分なりの経済観念を持つ必要があります。
僕の場合は、資産シミュレーションによる耐久性、精神的な下限・適性ライン、意味ある支出への意識という3つの軸をもとに、迷いの少ないお金の使い方を作ることができました。
経済観念は、単なるお金の使い方や貯め方ではなく、「FIRE生活をどう過ごしたいか」を具体化したものでもあります。
FIREは自由だからこそ、自分らしい判断基準を作って、自由と安心を両立した経済観念として定着できるのだと思います。
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