FIRE(経済的自立と早期リタイア)を目指す人の多くが、「FIREをすれば、お金の不安から解放される」と考えています。
でも実際にFIREしてみた僕の感覚では、むしろその逆で、新しい不安のかたちが現れると感じました。
たしかに、働かなくても生活できるだけの資産があれば、「時間の自由」は手に入ります。でも、それと「お金から自由になる」はまったく別の問題でした。
今回は、「FIRE=お金からの解放」という幻想に潜む3つの落とし穴について、僕の体験をもとに綴ります。
「働かない=お金の不安がなくなる」という誤解
FIRE後、最初に直面したのは「お金が減ることへの恐怖」でした。
会社員時代は、「毎月必ず給与が入る」という安心感がありました。
これは当たり前のことですし、多少お金を使っても翌月には補填されるサイクルもあり、「安心の土台」を過小評価していたと思います。
なのでFIRE後、収入より支出が大きくなり資産取り崩しステージになると、「資産の元本が減っていく」という事実に直面します。
事前にシミュレーションをして頭で理解していても、実際にその状況に立つと心理的ストレスは想像以上でした。
結果的に、サラリーマン時代よりもお金に対して敏感になったのです。
人間の感情なんて、得した時の喜びより、損した時の傷みを強く感じるものです。
ただ、FIRE生活でお金が減りゆくストレスを因数分解し、「不安、未練、恐怖」の3つだったと理解し、これを克服することで次第に慣れました。
「お金を気にしない生活が手に入る」という幻想
FIREすれば「お金なんて見なくていい」、「もう気にしなくていい」と思っていた時期もありました。
でも現実はまったく逆でした。むしろFIRE後の方が、資産残高や収支に敏感になったのです。
毎月の資産推移、収入、生活費の支出、資産構成・・すべてを以前よりも細かくチェックするようになりました。
会社員の頃は「増えていく楽しみ」で資産を管理していたのに、FIRE後は「減っていくことへの不安」が主な動機になっていました。
そこで気づいたのは、「お金から自由になる」とは、お金を無視できる状態ではなく、お金と健全な関係を築く力なのだということです。
お金とどう向き合い、どう扱うか。その姿勢こそが、FIRE生活の質を決めると感じています。
なお、いまの僕には「時間>お金」という価値観で、投資も断捨離しています。
それはFIREから1年経った頃に、①時間が何より大事だ、②資産管理での透明性、資産運用での安全性を達成した、と感じてから今のように変化しました。
「節約生活が自由を支える」という自己矛盾
FIRE後の生活は、基本的に「今ある資産で生きていく」ことが前提になります。
そのため、生活設計はどうしても節約ベースになります。
もともとFIREを目指す過程でも節約は当たり前だったので、その延長線上で生きることになりますが、それが結果として「お金を使う自由」の足かせになる場面も出てきました。
せっかくFIREで「時間の自由」を得たのに、「お金に囚われて使えない」というのは、どこか矛盾しているように思えたのです。
僕の場合、FIREから3年が経過した頃から「お金を使う」という習慣が少しずつ定着してきました。
それは、①資産管理で可視化する、②最悪時の資産毀損シミュレーションをしておく、③現預金比率を最適化する、という取り組みで「お金をいかに有効に使うか」に意識が変わっていたからです。
終わりに
FIREは素晴らしい選択肢です。
でも、「お金のことを考えなくて済む生活」だと思っていると、そこでつまずく可能性は高いと思います。
僕がFIRE後に学んだのは、「お金の不安から自由になる」ためには、お金から目をそらすのではなく、お金との向き合い方を自分なりに作り上げることが重要だということです。
FIREは確かに時間の自由をもたらしてくれますが、「お金の自由」は、案外、自分の手で作り上げるものなのです。
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