先日、僕の関心領域である「FIRE」と「民泊」という言葉が並んだ日刊SPA!の記事を目にしました。
「全国かつ小資本から始められる副業」としての民泊の魅力を、生稲崇氏が語る内容です。
同氏は、高卒・年収500万円未満の状態から不動産投資を始め、3年でFIREを達成し、累計約5億円の資産を築いたと紹介されています。
僕自身、不動産にレバレッジをかけて資産形成を進めるという考え方には強く共感します。
また、エリア特性を見極め、ホテルでは提供しづらい体験価値で差別化する民泊戦略は、事業として見ても興味深いものです。
そのうえで、この記事を「FIRE」という文脈で読むと、疑問に思う論点が3つありました。
今日はその点を綴ります。
「投資をちゃんと学べば誰でもFIREできる」高卒から資産5億円、“弱者が強者に勝つ”民泊旅館投資の極意
「誰でもFIREできる」という誤解
第1に気になったのは、「投資をちゃんと学べば誰でもFIREできる」というタイトルです。
FIREは、資格やスキルを習得すれば到達できるものでもありません。入金力、資産規模、生活水準、リスク許容度、さらには時代背景といった環境要因の影響を大きく受けます。
投資として「民泊」を正しく学べばFIREできるかもしれません、他の投資を学んでもFIREできるかもしれません。
でも「投資をちゃんと学べば誰でもFIREできる」との表現は過度な期待を抱かせかねないと感じました。
民泊は「不動産」ではなく「事業」
第2に、民泊は不労所得というより労働投入を前提とした「事業」に近いという点です。
記事では、規模拡大で利益率を高める戦略が述べられています。
「まず棟数を拡大し、その後に清掃の内製化などを進めて利益率を高めていくというものです。最初は代行を使い、後からスタッフを直接雇ったり、自分で手配した外注の清掃を入れたりすることで利益を高めていきます。こうした工夫の余地が広いのも、民泊旅館投資のいいところです」
これは、「物件発掘、リノベーション、民泊申請、集客、ゲスト対応、清掃、レビュー管理」といった民泊で必要な一連のオペレーションを棟数拡大しながら内製化で効率性を高めるもはや「副業」ではなく「事業化」です。
なるべく働かない時間を増やすFIREから遠ざかり、もはや「民泊事業で起業」のようになります。
「時間と責任」が最大の論点
第3に、仮に民泊を「副業」と位置づけてFIREするにも構造的な難しさがあります。
それは、「民泊のオペレーションを自分で担えば時間を失い、外部に委ねれば利益率が下がる」というトレードオフの構造があるからです。
また、代行会社を使って自動化・省力化しても、最終判断はオーナーに残ります。
特に民泊は、予約サイトのレビューやオーナーの評判が成否を左右するので、迅速な対応や丁寧なトラブル処理がそのままオーナー(ホスト評価)に直結します。
もし自分が民泊オーナーになったら?と考えたら「会社員時代、海外から緊急メッセージが夜中に入り、起きて即答していた・・」という重く束縛された日常に戻るようで、「時間が奪われ、責任がのしかかる」と考えてしまいました。
終わりに
民泊投資は、人との交流や事業運営そのものを楽しめる人にとってはやりがいのある分野だと思います。
ただし、FIREという観点からみると、民泊は手軽な副業とも、手離れの良い不動産投資でもなく、「事業」だと感じます。
僕にとってのFIREは、「時間の自由」と「最終責任を背負わない軽い状態」です。
FIREを目的に民泊に取り組むというのなら、なおさらFIREで得たいものが何か、それを考える機会につながるよう、この記事を取り上げました。
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