FIREや早期退職のような大きな局面で判断をする時、「もっと情報が必要だ」、「詳しい人に聞こう」と考えるのは間違いではありません。
どれほど真剣に考えても、自分の視野・経験・思考の深さという範囲(=自分の枠)を越える視点で判断できなければ、その判断が「本当に正解か」という迷いが生じて当然です。
とはいえ、無防備に他者の意見を取り入れるだけでもいけません。
大事なのは、自分の枠の中で一度仮判断を置いて、そして他者の意見を取り入れることです。
今回は、その仮判断の役割とそこから判断に確信を持つまでの流れをまとめます。
仮判断がないと「人の意見に振り回される」
仮判断とは、最終決断ではなく、自分の価値観や前提に照らして置く「暫定解」です。
これを持たずに他者の意見を聞くと、
・他者の価値観に流される
・成功体験をそのまま模倣したくなる
・自分が確かめたい論点すら曖昧になる
という状態になり、判断はむしろ混迷します。
つまり、相談する前に“自分なりの仮判断”を持っておくことは、最も基本的で重要な前提なのです。
他者の視点は「ズレの点検」に使う
仮判断を置いたうえで、次にすべきは ズレの点検です。
僕が推奨するのは次の3タイプの人に当ててみる方法です。
① 自分より少し先を行く経験者
② 自分と価値観の近い人
③ あえて価値観の遠い人
この3つを通すことで、
-
歪んだ前提
-
見落としたリスク
-
感情が過剰な部分
-
思い込み・勘違い
こうしたズレが浮き彫りになってきます。
他者の意見とは「判断を整える補正レンズ」として使うものなのです。
「判断を委ねない」ための注意点
ここで最も強調したいのは、他者に判断させてはいけない ということです。
人は、自分が消化した材料でしか最終判断を下せません。だからこそ他者の判断をそのまま採用してしまうと、
・他責になる
・ブレ続ける
・自分軸が弱くなる
・判断が自己肯定感に結び付かない
という失敗が生じます。
大事なのは「意見を取り入れる」のではなく、「視点を借りる」という姿勢です。
「成功体験だけ語る人」に注意する
特にFIREのようなテーマでは、成功者ほど「これが正解だ」と語りがちです。
もちろんその体験談は1つのアプローチとして参考にすべきですが、問題は、それを受け手が「再現したい」と模倣するだけに終わることです。
FIREでの資産形成、投資手法、FIRE後の生活の良し悪しも、人の数だけ解があります。
前提として、変数が多い(社会環境、時代、経済情勢、家庭環境、仕事、価値観、社会的属性、生活水準、知識、スキル、経験、性格、好み、得手不得手・・)ので、成功の方程式がそのまま使えるとは限りません。
大事なのは成功体験そのものではなく、その人がどんな迷いを抱え、どう考え、どう判断軸を整理して結論を出したかという「プロセスの知恵」を得ることです。
ここを間違えると、判断を他者に委ねてしまい、成功からむしろ遠ざかります。
終わりに
判断は、自分の視野の枠の内側でしかつくれません。
その枠だけで正解を求めれば迷うのは当然です。
だからこそ、
① まず仮判断を置く
② 他者の視点でズレを点検する
③ 得た知恵を自分の軸に戻して再統合する
この3ステップが、FIREのような大きな選択では重要です。
次回は第4弾「変えられること/変えられないことを分けて不確実性に備える」として、判断の現実性と実行段階の最適化を深掘りします。
↓

