最近、「年収800万円以上・身長170cm以上の“普通の人”」という条件で婚活をする女性の記事を読みました。
恋人との破局を経て、自己肯定感の低さを抱えながらも、マッチングアプリで結婚相手を探している女性の話です。
しかし出会う男性は、モラハラ気質、コミュニケーションが成立しない人、遊び目的、既婚者など「変な人」ばかりで、「普通の人でいいのに、なぜ出会えないのか」と嘆いています。
この記事を読んで、最初の条件設定そのものに歪みがある(普通を求めていない)、と感じました。
問題は「自分が普通という感覚と世間の実態のずれ」にあるのに、それを「運が悪い」、「相手が悪い」という受け止め方は残酷な人生になると思う点を綴ります。
年収800万円以上という条件は、どれほど「普通」なのか
この女性が言う「普通」とは、「年収800万円以上、年齢±2歳、厚生年金のある会社勤め、身長170cm以上、大卒」という条件です。
これが普通となると、少し実態とのずれを感じます。
年収800万円以上の男性は、国税庁の民間給与統計からは、全体の1割に満たず、20代では1%未満です。そもそもトップ層になります。
加えて、普通という確率も(年齢x職業x身長x学歴x居住地)など普通を多重に重ねれば母数は(0.7x0.7x0.7x0.7x0.7)と絞られます。
つまり、「年収800万円以上の普通の男性」は、感覚的には身近に見えても、確率的にはかなり希少な存在です。
「普通を求めている」という言葉と、世の中のリアルの分布にズレが生じています。
年収800万円という“保険”が市場を変えてしまう
また、なぜ年収800万円が必要なのか?
おそらくこの条件は、彼女にとって不安への保険なのか、自己肯定感の低さを補う目安なのかもしれません。
スペックで相手を絞れる婚活では、この保険をかけた瞬間に、探す市場が大きく変わるという側面があります。
そうして絞られたなかで彼女が出会った男性は、コミュ力不足、モラハラ、遊び人、既婚者、メンヘラなど、「普通ではない」と感じる相手ばかりとのことです。
でも冷静に考えれば、年収800万円以上で、性格的に大きな難がない男性の多くは、婚活市場に来る前に職場や知人関係、あるいはその紹介といった一般恋愛市場で囲われている可能性が高いはずです。
結果として婚活市場に残りやすいのは、
・仕事優先で恋愛を後回しにしてきた
・人間関係に癖があり長続きしなかった
・自由を手放したくない事情がある
といった「理由のある人」になります。
理由のある男性が悪いわけではなく、理由あるゆえあえて「年収800万円を稼いでいるなら、女性側に対しても一定の理解力や包容力を求める」のが自然です。
「変な人ばかり」に見えるのは確率の問題
このような条件設定の結果、違和感のある男性にばかり出会い、「普通の人でいいのに」と嘆く・・・といっても、運の問題として片付けられる話でもありません。
母集団が小さく、かつ偏っていれば、そうした結果になる確率が高くなるのは当然です。
なので、問題は努力ではなく、最初のフィルター設計にあると女性も気づけばもっと違った展開になると思います。
例えば、年収800万円という条件を外し年収400万円程度という「普通が多く存在するゾーン」に設定すれば、NGに該当しない男性は格段に増えるはずです。NG男性が嫌ならば・・。
あるいは年齢を±2とせず、もっと上の世代に広げても良いのかもしれません。
どちらにしても、これは運の問題ではなくマーケティングの問題に思えます。
終わりに
「ふつうの人がいい」という言葉は穏やかですが、条件を先に積み上げすぎると、その“ふつう”は現実の分布から外れてしまいます。
経済的安定性を求めると、また、安心できる相手と出会う可能性を遠ざけています。
この構造はFIREも同じで「不安だからもっと貯蓄額を積み上げよう」と貯蓄額という条件を高止まりさせて働き続けると、FIRE決断が先延ばしになります。
条件で不安を消そうとした瞬間、選択肢は狭くなるということも重要なポイントです。
普通を求めているようで特別を望んでいる・・という当たり前の結論にしか見えなくて、その女性のアプローチは良策とはとても思えません。
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