FIREに限らず、人生では大きな判断に直面するたびに迷いが生まれます。
「本当に今なのか?」、「やめたら後悔するのでは?」、「もっと別の選択肢があるのでは?」
こうした不安は、選択肢そのものより“判断の扱い方”に原因があることが少なくありません。
僕自身のFIRE経験、そしてこれまで受けた相談を踏まえると、判断を5つの軸で整理すると迷いは驚くほど減ると考えます。
この連載では、その「判断の5軸」と軸について綴ります。
判断が揺らいだ時に考えるべき5つの軸
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判断すべきテーマの性質を見極める(長期/短期・可逆/不可逆)
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自分の“価値観の核”に照らして仮判断を置く
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他者の視点で仮判断のズレを点検する(判断は委ねない)
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変えられること/変えられないことを分けて整える
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主体的に決めたと言えるか、未来の自分に説明できるか
この5つは、判断の“答え”を導くというより、判断のプロセスを正しく整えて自分の判断に自信を持つための方法というものです。
① 判断テーマの性質を見極める(長期/短期 × 可逆/不可逆)
判断が難しくなる場面の多くは、テーマの性質を取り違えていることが原因です。
特に「長期/短期」と「可逆/不可逆」の2軸を誤ると、迷いが増幅します。
FIREの判断
たとえば FIREするかどうかは、典型的な「長期 × 不可逆寄り」で解くべきテーマです。
職種、年齢、経験、実績によっては1度辞めればキャリアに戻ることが困難だったり、戻れても条件が落ちたりといった不可逆性が高い性質の判断です。
だからこそ、目先の感情(仕事の好き嫌い、楽しさの程度等)だけで判断するのは注意が必要です。
趣味の判断
対して、FIRE後の趣味選びは明らかに「短期 × 可逆」のテーマです。
散歩や運動を始めてみる、絵や音楽、陶芸など芸術や文化体験をする、旅に出る・・・やってみて「どこか違う!」と思えばすぐに戻れます。
また、試行を重ねるほど自分の長期の好みも見えてきます。
ここに長期判断を持ち込んで「何が自分の趣味にあうか?」と考えても時間ばかりが無駄になりがちです。
悩むぐらいなら、働きながらでもやってみたり、やりたいことをリストしておいてFIRE後に片っ端からやってみるなどが良いのかもしれません。
日常的な判断
また、日常の軽い判断・・たとえば「仕事帰りにジムへ行くか」、「今日は外食にするか」などは「短期 × 可逆」の典型で、深く考えるほど効率が悪くなります。
ここに長期的意味づけ(健康のため、節約のため・・)を求め始めると、判断疲れが蓄積してしまいます。
なので、習慣としてルール化するなどで判断の場面を減らすことが有効だったりします。
判断テーマの扱い方
ここで大事なのは、判断すべきものごとに対して、どの判断方法が適切かの選定です。
短期のものを長期視点で判断したり、不可逆なものを可逆として判断すると、弊害が生まれます。なので、
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長期 × 不可逆寄り → 感情に寄りすぎず、構造的・未来視点で考える
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短期 × 可逆 → まずやってみる、軽やかに動く
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軽い日常判断 → 深掘りしない。習慣化ルールで意思決定のエネルギーを節約する
この「判断の扱い分け」ができると、決断力が高まります。
なお、判断と決断は違います。例えば、「FIREできるのにずるずる働く」は、どちらかといえば決断の問題なので、決断を後押しするために「判断方法をクリアーにして確信を得る」が有効だったりします。
判断の不一致が生むすれ違い
判断の“性質のズレ”は、人間関係でもよく起こります。
たとえば浪費しがちな人に「貯金しないと将来行き詰まるよ」と助言するケース。
あなたは「長期 × 不可逆」の視点で伝えているのに、相手は「短期 × 可逆」の感覚で受け取ると、行違うだけです。
同じ言葉でも不一致があると受け手に「響いていない」「届かない」というストレスや、そこから「適切な判断もできずに子供っぽい」と思ってしまうかもしれません。
感情的にならず、不一致する構造に問題があるとして、冷静に話すことも大事です。
終わりに
判断の迷いは、判断の質の問題ではなく「扱い方」の問題であることが多いのです。
今回は「長期/短期 × 可逆/不可逆」というレンズを持つだけで、判断の道筋は驚くほどクリアになるという例です。
次回は、「自分の価値観の核に照らして仮判断を置く」という判断プロセスの第2の軸を深掘りしていきます。
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