FIREを目指す人の多くは、「お金の不安さえなくなれば自由に生きられる」と考えます。
実際、経済的自立はFIREの絶対条件です。
ですが、それはFIRE生活スタートに過ぎないと僕は感じています。
なぜなら、FIRE後の充実度を大きく左右するのは「お金」よりも「自分の存在をどう捉えるか」というアイデンティティに左右されるからです。
今日はその理由と、僕なりの対処法について綴ります。
FIRE後に訪れる「喪失感」
会社を辞めると、最初は開放感で満たされます。
時間の自由、ストレスのない朝、締め切りのない生活・・。
ところがその解放感でずっと幸福を得られる人がいる一方、数か月もすると、不思議な空白が訪れてしまう人もいます。
それは「何をしても構わない」という自由の裏にある、「自分の役割を失った感覚」です。
いわば、アイデンティティロスです。
FIREによって会社という「枠」から解放され、同時にその枠が与えていた「自分の居場所」、「社会に貢献している感覚」、「目標に向かって努力し向上する感覚」というものが失われることです。
「会社嫌い」も「会社好き」も依存していた
そんなアイデンティティロスを感じるのは、無意識に会社に依存していた人です。
給与収入を得るために働くという経済的依存というより、知らずうちに会社の枠のなかのみで自分の居場所、役割り、人とのつながり、承認などを得ているケースです。
幾ら経済的自立をしても、精神的に会社に依存し、それを認識していないほど、そのロスが大きくなると思います。
なお、会社を嫌って辞めた人でも、実は会社に心理的に依存しているというケースもゼロではありません。
既に退職前から会社に見切りをつけていて精神的にも自立している場合は、経済的自立で会社を距離を置くことで、アインデンティティロスは少ないのが一般です。
ところが極端に、会社生活への恨みでFIRE生活を幸福に過ごせない(会社への反発でしか居心地が良くならない)という場合も、一種の、精神的な依存だと思います。
例えば、上司に反発したり、制度に不満を言ったりしていたりで、その「会社に反対する自分」という形でのFIRE後の幸福を保つ場合です。
FIRE後に必要なのは「再出発」のプロセス
このアイデンティティロスを乗り越えるには、結局、自分の役割を「再定義」することです。
自分の居場所をみつけたり、新たな繋がりを作るとか、そうしたものを会社に依存して無意識に得ていた人ほど、その代替が必要だと思います。
それゆえ例えば、
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地域活動やボランティアを通じて「貢献の場」をつくる
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自分の関心を深める学びや実験を生活の軸にする
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小さな日課を積み重ねて、自分で自分を肯定できる習慣をつくる
といったことが有効だと思います。
終わりに
経済的自立を果たしただけではFIREの成功確率はせいぜい50%だと思っています。
残りの50%は、精神的自立・・つまり「会社に依存しない枠のなかで、FIREした後の自分を肯定できるような存在意義とか意味を自分でつくること」にかかっていると思います。
とくに、自由=解放感というもので日々を満足して過ごせない、どこか物足りないと感じてしまう「無意識に会社に依存してきた人」ほど、その代替先は必要です。
こうしたアイデンティティロスは、自分自身の新たな役割や居場所を見い出すきっかけなので、決して悪いものではありません。
ただ、精神的な会社依存はFIRE前に認識したり、想定したり、警戒したり、できればリタイア前から準備を始めるをすれば、あとはFIRE生活を送りながら調整できるものだと僕は捉えています。

