先日の夜、都内の電車に乗ったとき、ふと車内の吊り広告をじっくりと眺めてみました。
車両が空いていたこともあり、いくつかの車両を歩きながら観察したのですが、その光景に「まさに今の世相が映っているな」と感じました。
僕が現役で通勤していた頃は、旅行、家電、本、娯楽施設など、余暇や夢を感じさせる広告が多かった記憶があります。
ところが今は、①不動産、②求人、③塾・・この三つが圧倒的に多いのです。
それぞれの広告には、いまの東京(日本)が抱える現実と価値観の変化が透けて見えます。
今日はそんな車内広告から感じた世相を綴ってみます。
不動産広告
いちばん多く目にしたのは不動産広告です。
特徴的なのは、都心の高級マンションではなく、「○○線の〇〇駅まで45分」、「郊外で自然と触れる生活」など、都内の物件の高騰によって手の届かない存在がゆえに、「手が届く豊かさ」を強調する広告ばかりです。
電車という媒体は、通勤・通学でその沿線を利用する人に向けた広告なので、まさに電車の沿線にある物件の宣伝はうってつけです。
「都心は住めないけど、郊外の広いお家もいいかも・・」と思わせる、そんな広告が目立ちます。
求人広告
次に目立ったのは求人・転職関連の広告でした。
第2キャリアの転職フェア、人材紹介など、まさに流動化した労働市場を象徴しています。
きっと早朝の電車に乗りながら「仕事が嫌だな~」なんて思う人がみれば、まさに「転職しよう」といったきっかけになるのかもしれません。
今の社会は転職が当たり前になっていますし、しかも労働力不足なので、こうした宣伝が増えるのも理解できます。
塾広告
もう一つよく目にするのが、学習塾や予備校の広告です。
「〇〇大学の合格者数〇名」、「自主性を育てる」・・そんな言葉が並びます。
少子化にもかかわらず塾が増える背景には、家庭が教育を「投資」と捉える意識の高まりがあるのでしょう。
実際、僕の住むマンションでも、同じ塾のバッグを持つ子どもたちをよく見かけます。
子ども達どうしも「一緒に通おう」と言ったり、親も「〇〇さんの家は塾に通い出した」などで、地域全体で塾に通うのが当たり前になっているのかもしれません。
実際、僕の住むエリアも店舗などがつぶれたあとに入居するのは塾が多かったりします。
終わりに
こうして眺めてみると、車内広告はいまの社会を映しだしていると感じます。
かつてのような旅行やレジャーなど、夢や余暇を扱う広告は減り、代わりに「住まい」、「仕事」、「教育」といった「生活の根幹」を支えるテーマが中心になりました。
FIRE生活で電車に乗る機会も減ったせいか、かえってこの変化(豊かさよりシビアな競争社会へ)を感じた次第です。

