年金の受給方法として、「早くもらうと損をする」とか「遅くもらっても長生きしなければ損」と、損得勘定で比較されることが多いのが実態です。
もちろん経済性は重要ですが、もう一つ見るべき点は、年金ならではの特性をどう活かすかということです。
先般の記事で、僕は「繰り下げ受給」によって年金額を増やす考えを話しました。
その根底にあるのは、①労働収入、②資産収入、③年金収入という3つの収入源をいかに組み合わせ、老後の安心を最大化できるかとの視点で「年金を繰り下げすること」のメリットを綴りました。
「頭のいい人は年金を繰り下げ受給しない」という記事のナンセンス
今日はその逆で、「年金の繰り上げ受給」を戦略的に使うとしたら、どんなメリットがあると感じたか、それを綴ります。
① 健康リスクへの対応
年齢を重ねるほど、健康でいられることの有り難みを実感します。
もし「元気に動ける60代前半のうちに資金を使いたい」と考えるなら、繰り上げは十分に合理的です。
体力や気力、人間関係、行動範囲は必ずしも80代まで維持できません。
「お金を使える時間が有限である」と考えると、「人生の活動期」に資金を集中させることは、合理的な人生戦略の一つだと思います。
② 自律性を得る
繰り上げ受給によって早めに年金を得ることで、セミリタイアやパートタイム勤務など、働き方を柔軟に変える選択肢が広がります。
経済的不安を和らげながら「自分の時間を増やす」ことができる点は魅力です。
これは、仕事中心の人生から自分中心の人生へ移行するための、心理的リスクの緩和策にもなります。
③ 投資リスクを減らす
FIRE初期など、相場が荒れた時期に投資をしたり資産を取り崩すのは心理的にも負担が大きいものです。
資産運用の観点から見て早期に安定したキャッシュフロー(年金)を得ることは、取り崩しリスクの軽減や、投資における心理的安定をもたらします。
投資判断を冷静に保ち、結果的に運用パフォーマンスを守る効果も期待できます。
④ ライフイベントの柔軟対応
繰り上げ受給によって安定収入を早期に得られると、介護や家族支援、住居移転など、人生の転機に柔軟に対応できます。「親の介護で退職したい」とか「地方に移住して生活コストを下げたい」といった決断を支える下支えになります。
人生の質を優先する選択をしやすくなる点でも戦略的な意味があります。
⑤ 精神的安定=“経済的クッション”の早期確保
年金は、労働収入や投資収入とは異なり、「努力不要の定期収入」です。
この存在が精神的なセーフティネットになります。
「最悪、年金があるから大丈夫」という感覚があるだけで、挑戦や転換への心理的ハードルが下がります。
その結果、挑戦を支える「安心感」が生まれ、として、より挑戦しやすくなります。
⑥ 運命に対するリスクヘッジ
寿命は誰にも分かりません。
もし繰り上げ受給をして長生きしたなら、「総額では損したけれど、長く生きられたのだから良かった」と納得できます。
逆に、もし早く亡くなってしまっても、「早く年金を受け取り、元気な時期に使えた」と思えたりします。
このように、どちらに転んでも心理的な納得感を得られるバランスを取るような感情的リスクヘッジとしての役割も果たせます。
終わりに
年金の繰り上げ受給は、「早くもらう=損」と単純に語れるものではありません。
健康、働き方、投資、ライフイベント、心理的安定、そして寿命という不確実性で、人によっては繰り上げ受給が有効なこともあると思います。
なので、僕自身は繰り下げをもって「人生の安定化」をする方が価値があると感じていますが、各自の状況次第では、こうした繰り上げも有効だと思います。
なので、前回の記事でも書いた通り、「自分にとって戦略的に年金を活用する」ということが何より大事という思いは一貫しています。
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