前回の記事で、「仕事が嫌だ」という人の感情は、5つの根源から生まれることを書きました。
それは、①人間関係が嫌(パワハラ上司など)、②会社組織が嫌(不公平な評価制度など)、③報酬が不満(給与が安いなど)、④仕事内容に不満(やりたくない仕事)、⑤働くこと自体が嫌(会社は搾取するから)というものです。
これらが複雑に絡み合って「仕事が嫌」という感情になるわけですが、実は「仕事が好き」という感情も同じように単純ではありません。
今日は、この「仕事が好き」という気持ちの正体を掘り下げます。
「全部好き」は存在しない
結論から言うと、仕事が好きとは「総合的に見て好き」という意味に過ぎません。
仕事にまったく嫌な要素がなく、人間関係も完璧で、会社の制度に一切不満がなく、報酬も十分で、仕事内容も常にやりがいがあり、資本主義の仕組みまで愛してやまない・・・そんな人が本当にいるでしょうか。
現実にはどこかに小さな不満や不快感はあるはずです。それを抱えながらも「総じて好き」と感じているのが、多くの人が言う「仕事が好き」の正体なのです。
好きの内訳を意識する
ここで大切なのは、自分が「どこを好きで、どこに不満を持っているのか」を内訳として把握することです。
人間関係は悪くない、給与は暮らせるだけある、仕事内容にはやりがいがある・・多少の不満はあっても、全体としてプラスが上回るから「好き」と言える。これが自然で健全な感情です。
逆に、内訳を曖昧にしたまま「仕事が好き」と思い込んでいると、小さな「嫌」が積み重なって、ある日突然大きな爆発につながると思います。
好きの根拠を見える化しておくことは、感情の安定に直結するのです。
「好き」と「依存」の違い
注意したいのは、「好き」と「依存」を取り違えることです。
辞める勇気がない、会社に居続ける自分にしか価値を見いだせない。そんな状態で「好き」と言っているケースもあります。
これは本当の「好き」ではなく、「好きでなければならない」という自己暗示に近いものです。
実際には不満が多いのに「ここしか居場所がない」と思い込み、自分を納得させている。その結果、FIREを望んでいるはずなのに、自ら資産形成への動機を弱めてしまうことさえあります。
さらに、感情を偽り続けることで心身をすり減らし、精神的に追い詰められる危険もあるのです。
終わりに
「仕事が好き」とは、幻想的な「全部好き」ではなく、嫌な部分も含めて総合的に評価した結果の「総じて好き」だと考えます。
僕自身もそう捉えて「仕事を好き」と言うことがあります。
大事なのは、好きという感情や嫌いな感情など、全ての内訳を把握して初めて、自分の「好き」は本物か、それとも依存や思い込みかを見分けられます。
不幸なのは、本当はFIREを望んでいるのに「仕事が好き」と思い込んで働き続けている、つまり自分を縛っている状態です。
自分の感情に正直になり、「好き」と「嫌い」と「依存」を切り分けて働き方を選ぶことが、健全で納得感が高い状態になると思っています。
ちなみに「好きを仕事にしよう!」というキャッチフレーズがありますが、僕はこれがとても残念であり危険に感じています。次回はその点を掘り下げます。
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