いまでこそFIRE(経済的自立と早期リタイア)という言葉が一般化していますが、90年代の頃にもアーリーリタイアというトレンドは記憶しています。
当時は完全リタイアは「隠居」、セミリタイアは「脱サラ」とも呼んでいて、当時の常識ではそれなりの「高収入」、「出世組」、「退職金が多い大企業勤め」といった一部のエリート層が中心でした。
それゆえ、FIREを実現するには、「長年の勤続」や「退職金」が大前提で、限られた人だけの選択肢という空気すらありました。
しかし今は、それが明らかに変わっていて、令和時代は「一発逆転型FIRE」といったことも、以前より可能性が高いと感じます。
今回はその背景を、3つの視点から整理してみます。
① 投資・資産運用の“民主化”が進んだから
90年代の投資といえば、証券会社に電話をして株を買うような一部の人だけが行う特殊なものでした。当時は情報も閉ざされていて、「資産運用」と「給与所得」はまったく別の世界にあったともいえます。
それが今はネット証券が台頭し、インデックス投資も当たり前になっています。
YouTubeやSNSを通じて、誰でも資産形成の基本を学べる環境も整っています。
特に新NISAやiDeCoのような非課税制度が拡充され、「少額から長期で積み上げる」スタイルが多くの人にとって現実的な選択肢になりました。
つまり、高年収でなくても、20代・30代から仕組みに乗って積み立てを続けることで、FIREというゴールは十分視野に入ってくる時代になったと感じます。
② 働き方と収入源の多様化が進んだから
もう一つの大きな変化は、働き方の柔軟性の広がりです。
副業解禁、インターネットを使った個人ビジネス(スキル販売、ブログ、動画配信など)が急速に一般化し、「本業+α」で収入を得る手段が誰にでも開かれるようになりました。
また、収入を増やすだけでなく、「暮らしを小さくして固定費を下げる」方向にも目が向けられるようになりました。
たとえば地方移住など、生活コストを抑えつつ豊かな暮らしを実現する選択肢も今は現実的です。
こういった多様な手段を活用すれば、必ずしも多額の資産がなくても、FIREを段階的に実現できるようになってきました。
完全リタイアではなく、必要なぶんだけ働きながら自由を保つ「サイドFIRE」も一般化しています。
③ FIREの“定義”が多様化し、現実味を増した
かつてのFIREは、「何も働かず、悠々自適に一生を暮らす」イメージが強かったと思います。
ゆえに、「1億円貯めて完全リタイア」という発想が一人歩きしていた節があります。
しかし今は、FIREの中身が多様化し、「週に数日だけ働く」、「興味のある分野で少しだけ収入を得る」、「ライフコストを自分仕様に調整する」といった柔軟で自分本位なスタイルが主流になっています。
つまり、FIREの目標額も、「年収の20倍」や「1億円」という硬直的なものではなく、その人の生活設計に応じて下げられるということです。
この変化は、「高収入でなければ無理」という固定観念を完全に崩してくれました。
終わりに
昔のFIREは、ある意味「勝ち逃げできる人」のためのものでした。
でも今は違います。収入よりも、考え方や設計力、そして行動の柔軟性がFIREの成否を分ける、そんな一発逆転が可能な時代です。
投資のインフラが整い、働き方に選択肢が増え、FIREの定義がゆるやかになった今、僕はFIREはもっと多くの人にとって「手の届くもの」になっていると実感しています。
これからFIREを目指す人には、頭っから「年収が高くないから無理」とあきらめる必要もなく、その気になった時、「どんなスタイルなら自分にも実現できるか?」という視点で人生設計するところから始めるのが良いと思います。
その意味では、「いまという良い時代に生きている」と思っています。
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