早期リタイア後にはじめて「社会での自分の存在価値が無くなった」と後悔してしまうケースがあります。
存在価値というのは形がないのでリタイア前(会社の内部にいる状態)ではリタイア後の具体的な感覚を想像しにくいものです。
こうした想定違いを避けるため、リタイア前にはなるべく自分の感情をフラットにして「会社と自分の関係」を客観的に見つめる時間も大事です。
今回は5つのセルフチェック事項として、①社会的役割や貢献をもたらす、②自己承認や自己満足をもたらす、③自己成長をもたらす、④人間関係や居場所を提供する、⑤信用や勲章を提供する、を取り上げてみます。
会社の存在が重要だという話ではなく、会社と自分の関係を理解しリタイア後に想定違いからの後悔が無いようにしようという趣旨です。
社会的役割や貢献をもたらす
会社が成長し続けるのは社会において何らかの役割を担っていたり貢献をもたらしているからです。
時に自分が勤める会社を「嫌いだ」と言う人もいますが、一方で、世間はその会社が提供する商品やサービスを「役に立っている」とか「問題解決につながっている」と感謝したりすることもあるわけです。
会社の内部にいるとそうした会社の社会的役割や貢献を過小評価したり、あるいは「自分はバックヤードだ」とか「歯車でしかない」と実感しないこともあります。
それゆえ早期リタイア前には慎重に「自分の仕事は社会に役立っているのでは」とか「それを自分の存在価値と感じていることはないか」といった面を考えることも大事です。
特に、経営者を「労働力を搾取する奢り高い存在だ」と毛嫌いしそうした労働から脱するFIREを目指す人が、その一方で「大変な仕事をする人がいるから世の中がまわっている」と言ってるとしたら、そこには矛盾(仕事に自尊心を持たそうという姿勢がある)わけで、深層心理では、案外、仕事で自分の存在価値を求めていたり重視しているかもしれません。
自己承認や自己満足をもたらす
仕事を通じて自己承認や自己満足を得ることもあります。
自分が頑張って努力をした結果が上司や会社に評価されたり、自分が自分に課した目標を達成したことで自分を褒めたりなど、どれも自己承認や自己満足につながります。
仕事は給与を貰いながら何らかの目標に挑んだり結果を出そうと頑張る場にもなっているわけです。
早期リタイアをして仕事のルーティンが無くなると強制的に頑張る場もなくなるわけです。
その結果、自由でラクなFIRE生活では満たされず「なんだかんだ仕事は大変だったけどやりがいがあった」と後悔することも皆無ではありません。
自己成長をもたらす
仕事を通じて自分の視野が広がったりスキルや能力が磨かれて成長することも少なからずあります。
仕事を頑張った結果、達成感を得たり、その連続から自己効力感(自分はやればできる)といった自信を得たり、やがては自己肯定感(ありのままの自分で良いのだといった自己受容)につながっていきます。
それゆえ、早期リタイアをした結果こうした自己成長の場がなくなってしまい、成長のない日々に身を置くことで存在価値が無くなったと感じることもありうるわけです。
ただ、ある程度の自己肯定感が培われるところまでいけば、さほど短いサイクルで達成感が欲しいとも思わなくなったり、改めて「自分はやればできるんだ」といった自己効力感も気にしなくはなります。
つまり、ある程度の成熟した段階までいけばそもそも「成長したい」といった欲は少なくなることもあるので、早期リタイア前にどの段階にあるのか考えることも大事だと思います。
人間関係や居場所を提供する
仕事が嫌になる理由のトップが人間関係であるということは、逆に言えば、そうした人間関係で救われたり居心地が良いと感じる人もいるわけです。
また、人間関係が悪いといっても職場のどこかに自分のことを理解し応援してくれたり認めてくれる味方もいたりすることもあります。
その他、職場の雰囲気が良いという人もいます。
いまでこそフリーアドレスとして自席を持たない働き方もありますが、一般には、職場は日常的に通う場所であり自席は「自分の居場所」と思う人もいます。
僕の場合は飲み会や時に会社の人間関係も面倒だと思ったことはありましたが、一方で長い休みを取ったあとに仕事に戻って自席についたら「ほっとする」という不思議なきちもありました。
早期リタイアであらためて「自分の安心できる居場所があったのだ」と気が付く人もいますが、それはそれで新しい居場所をリタイア後に作ることも大事なのかもしれません。
信用や勲章を提供する
会社の知名度が高かったり社会的に信用の高さが求められる職種だと、それだけ社会生活では大きな「信用」になるわけです。
リタイアで会社(やその信用)を失うことで、社会のなかでの自分の価値が低下したと感じる人もいます。
また、そうした知名度の高い会社は人気が高く「狭き門をくぐり抜けた」といったことで「優秀だ」とか「勝ち組だ」といった「勲章」になるわけです。
もちろん会社は会社で個人は個人なわけで、「○○社に勤めているから人間ができている」とか「ビジネスができて優秀だ」とは限りません。
ただ世間ではそうした会社の看板や職種を信用と捉えたり勲章なる認識をするので、早期リタイアでそれらを一気に失うことで自己喪失になるケースもあるわけです。
終わりに
以上、「会社と自分の関係」として5つの側面から、①社会的役割や貢献をもたらす、②自己承認や自己満足をもたらす、③自己成長をもたらす、④人間関係や居場所を提供する、⑤信用や勲章を提供する、を取り上げました。
早期リタイア前にこうした観点から自分をごまかさず冷静に見つめ直すことが大事です。
もちろん会社や仕事だけが自分の存在価値を作ってくれる存在でもありません。
自分の存在価値は自分を大事にしたり、家族や愛する人との関係性に意味を見出したり、ボランティアなり社会貢献に自分の居場所を見出したりなど幾通りも道は開けるわけです。
FIREで経済的自立に加え精神的自立も大事であってそれが成立してこそ完全リタイアだとは思います。
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