終身雇用制度とは会社が正社員を定年まで雇用する制度です。
そんな終身雇用制度が崩壊するからといって、FIREで早期リタイアを目指す人は無関係だと思いがちです。
なにしろ定年まで会社に居座るわけではないので、終身雇用の枠には入らないからです。
でも実は、終身雇用制度の崩壊はFIRE達成を目指していた僕にとって、お金の面で2つの悪影響を及ぼしました。
それは、①定年延長に伴う年収伸び悩み(期間延長再配賦)、②成果主義に伴う年収伸び悩み(若年層向け再配賦)、です。
今日はこの2つの悪影響と、制度変更での会社組織による姑息な賃金抑制の裏側を綴ります。
終身雇用制度とは
終身雇用とは、企業が正社員を定年まで雇用し続けることです。
企業が倒産しないかぎり正社員の雇用は確保され、年齢や勤続年数を考慮して賃金や役職を決定する年功序列制度と合わせて運用されます。
企業のメリットは従業員に定年まで在籍してもらうことで長期的な目線から人材を育成(洗脳)できることです。
一方で従業員は「安定した雇用と収入」というメリットを享受し会社に適したスキルや能力を備えるわけです。
終身雇用制度の限界
そんな終身雇用制度が限界を迎えているのは、そもそも若い社員の労働人口が減少し、会社の社員年齢層もピラミッド型から逆ピラミッド型になるなかで、
・シニア層が居座って社員の老齢化(平均年齢の上昇)、
・社員の老齢化によって人件費が圧迫されていること、
・技術革新の進展で必ずしも高齢者=高スキル者とはならないこと、
といった理由です。
そんな構造問題から終身雇用制度の歪みが露呈して、実際、僕のFIREにも悪影響を及ぼしました。
その2つを記述します。
定年延長に伴う年収伸び悩み
定年といえば、昔は55歳が一般的でした。
ですが人口減少のなか、政府は労働力の確保やそこからの所得税等の財源欲しさから「高年齢者雇用安定法」を制定し、2025年から「65歳までの雇用確保」を企業に義務づけました。
僕の勤めていた会社も、本音では「給与が高い高齢者層には60歳で会社を去ってもらって、若くて人件費の安い労働力を確保したい」と考えます。
とはいえ政府制定のルールには会社も従うので、苦し紛れに妥協策を作りました。
65歳定年に向けた給与制度変更
まず、60歳定年から65歳まで雇用を保証する代わりに、40半ば以上の社員は給与が少し下げられる(下げ分を原資に60歳以降の雇用を保証する)といった給与制度設計の内部調整があったのです。
これは基本給で減らさず、姑息ながら、能力給部分の原資を減らしたのです。
能力給という名のもとに、実態は、以前と同じ評価では「評価連動」の給与部分が下がるような設計です。
当然、年収も少し下がることになります。
その下げ幅で得た人件費の原資で60歳以上の社員を維持するわけです。
会社としては「評価に基づいて公平にやった」と言いつつ、ほぼ全員が年収ダウンになる構造です。
こうした定年延長は、いわゆる「雇用期間延長の再配賦」で、会社としては定年までの時間軸を長く支払続けるが、毎年の支払額は少なくして、総面積(総支払額)は同じにするのです。
早期リタイアする僕としては「65歳まで定年延長しないでいいから、以前の通りの給与制度にしてよ」と言いたくなります。
役職定年や出向
同様に「役職定年」といって(会社にもよりますが)50歳あたりから役職を解いて給与を下げる方法や、グループ会社や取引先への出向で給与を減らす方法も運用されています。
僕はこの影響は受けなかったものの、もし該当したら給与が70%程度に下落するところでした。
成果主義による年収伸び悩み
また、終身雇用の弊害として「働かないおじさん」を大量発生しました。
働かないおじさんとは、周囲の期待に成果や行動が伴なわない定年手前のおじさん社員のことです。年功序列制度(年齢によって給与や昇格を定めていく人事制度)、そんなおじさん社員が高い給与をもらっているわけですが、これが若手社員のモチベーションを下げるといった悪影響が出ているのです。
そこで成果主義(仕事の成果に連動した報酬制度)が一部取り入れられました。
給与の2~3割が成果連動です。
そこでも、成果報酬の原資をなるべく若い人に当てるために、シニアの成果報酬は厳しめに設定し若い人の成果報酬として積極亭に使って組織全体の活性化が図るのです。
いわゆる若年層向け再配賦です。
これは若い人のモチベーションアップの使い方なら良いとは思いますが、早期リタイアをする前提の自分には、終身雇用制度のままが経済面では有利ではあります。
終わりに
以上、終身雇用制度が崩れることは、一見、早期リタイアをするFIRE志向者には無関係に見えますが、実は「給与収入減」という形で2つの影響がありました。
若い人はより恩恵があってシニアには不利になるものですが、いまのジョブ制へのシフトも同じ匂いがプンプンします。
会社はそんな「制度の見直し」という裏で、心地よいスローガンを作りながらも姑息に人件費操作もしますし侮れない生き物です。
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