老後資金や年金に関する記事は数多くありますが、その中には見出しと実態がかみ合わないものも少なくありません。
ゴールドオンラインに掲載された「73歳で金融資産7200万円。夫婦とも健康なら何とかなる」という記事もその一つです。
登場人物は「貯蓄の達人」と紹介されていますが、実態は退職金と不動産に支えられた「資産家」の話でした。
今回は、この記事から感じたことを率直に綴りたいと思います。
73歳で金融資産7200万円。「夫婦ともに健康であれば何とかなります」
退職金で大半が形成された金融資産
記事によれば夫の退職金は2600万円、妻は1800万円。合計4400万円が老後資産として一気に加わっています。
それ以前は金融資産1000万円未満だったとされ、現在の資産の半分以上は退職金によるものです。
にもかかわらず「自らの努力と工夫で数千万円を貯めた」という紹介文には、どうしても違和感があります。
退職金を取り崩さず残した点は評価できますが、それを「貯蓄達人」と持ち上げるのは無理があるでしょう。
実態は「不動産資産家」
さらに固定資産税は年間360万円。逆算すると評価額は2億5000万円超、市場価格では3億円以上の不動産を持つ計算になります。
つまり金融資産7200万円以上に、不動産資産が突出しているのです。
そうした背景があるなら「夫婦とも健康ならなんとかなる」どころか、そもそも不安の度合いが庶民とは桁違いです。
むしろ本来の見出しは「高額不動産を保有する夫婦の老後戦略」とすべきでしょう。
収支バランスはむしろ厳しい
記事によると、夫婦の年金と家賃収入の合計は手取りで45万円前後。
生活費は47万8000円ですから赤字の可能性が高く、実際には資産を取り崩して暮らしている姿が正確です。
しかし記事ではこの点に大きく触れず、安定した運用で資産を維持しているような印象を与えています。
タイトルと記事内容のちぐはぐさ
結局、この「貯蓄達人」という記事は「努力すれば誰でも老後に数千万円を貯められる」と読者に誤解させながら、実態は退職金と不動産資産に依存したごく一部の世帯の事例です。
学べる点があるとすれば「退職金を資産として残す姿勢」や「現役時代から投資をしていたこと」程度でしょう。
終わりに
この記事は「庶民的な貯蓄術の紹介」と見せつつ、実際には「富裕層寄りの資産管理」の話でした。
編集側は「真似できそうに見える事例」を示したかったのでしょうが、結果的に再現性は低く、タイトルと内容が乖離しています。
資産形成に再現性を求めるなら、積立投資などの王道がありますし、長期で見れば不動産と金融資産を組み合わせる手もあります。
無理して庶民向けに寄せるより、率直に富裕層を狙う人向けの記事として、「事例の1つ」として展開すれば良いのに・・と、思ってしまいます。
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