「持ち家vs賃貸」は個別条件で正解は違いますが、それにしても「マイホームは資産ではなく負債である」という主張は持ち家派の僕にはとても論理の飛躍に感じます。
この考えに最初に触れたのは20年前に読んだロバート・キヨサキ氏のベストセラー本である「金持ち父さん貧乏父さん」です。
今でもネットで「持ち家は負債だ」と断言するのをみるのですが、これは思考停止させてしまう極端な主張と思うので、この点について綴りたいと思います。
金持ち父さん貧乏父さんの論点
金持ち父さん貧乏父さんは大きな影響を受けた本の1つですし素晴らしい気づきを得られます。
ですがこの本で腑に落ちなかったのが「マイホームは負債」という主張です。
それは「マイホームを持つと住宅ローン、固定資産税、修繕費などの出費が出るので負債だ」ということです。
ちなみに同書の定義は、
・資産=自分のポケットにお金を入れてくれるもの
・負債=自分のポケットからお金を奪っていくもの
ということです。
前提についての疑問
この論理の前提で欠落していると思うのは「持ち家で住宅ローンへ出費をするのが負債ならば、賃貸だって賃料という出費をするのは負債なのにそれを言及していない」という点です。
これに近いものとして「持ち家より賃貸のが安い」という主張も世の中にありますがこれも正確ではないと思います。
同じ物件の総コストなら持ち家が安いのが一般的な傾向です。
そうでなければ物件コストに所有者利潤がプラスされた賃貸ビジネスは世の中に存在しなくなります。確かに赤字でも空き屋よりましと運用する人もいますが、大抵は農地や駐車場、太陽光発電などに転用したりするでしょう。
あるいは「自分の生活に応じた賃貸をする方が安くつく」というのも聞きます。
確かに家族構成が変わり子供が巣立ってもオーバースペックな持ち家に住み続けるよりは、適正サイズの賃貸に住むほうが安くつきます。
でもそれは「持ち家として買った物件が負債か否か」という話とはまた別です。
なので「持ち家が資産なのか負債(不良債権)なのか」といった定義を深めたいと思います。
負債の定義
「持ち家が負債か?」の基準であり定義は簡単です。
負債となるのは「持ち家の資産価値(評価額)がローン残債よりも低い場合」です。
正確には、
(持ち家の売却益*1)>(ローン返済額*2)・・・資産
(持ち家の売却益*1)<(ローン返済額*2)・・・負債
*1:持ち家の売却時の仲介手数料や不動産譲渡税、各種費用の清算後のキャッシュとしての残金
*2:ローン残高とその返済にかかわる諸費用総額
つまり、資産であるならば住宅ローンの完済日を待たずに売却してキャッシュを残す方法もあります。
なので時に「住宅ローンを組むと完済まで縛られる」という主張もありますが、買ったら永遠に住まなければいけないわけではありません。
資産であればいつでも処分ができまた手残りがありますし、途中売却して適正サイズの賃貸に移っても良いわけです。
というか、住宅ローンは完済後に支払いが減りますが賃貸は住む限り支払いから逃げられないことこそ「縛られる」という状態に思えます。
なお問題は負債の場合です。
株の損切のように途中に物件を売却し、売却益を住宅ローン残債に充てて、不足分を持ち出すことだってありえます。
負債物件を抱え、さらに安定的な収入源が途絶えるなどで家計破綻というのが本当の問題です。でもこれは不動産に限らず株式投資やFXで大きなレバレッジをかけても同じです。
つまるところ持ち家は「投資規模が大きい」ので価格変動リスクが怖いというのと、「持ち家が資産となる確率が低い」という確率への不安にいきつくのかもしれません。
不動産を取り巻くマイナス要因
そんな確率でいくと、持ち家に否定的な意見は「日本の人口減で不動産は負債になりやすい」という見解です。
「日本の人口」と超マクロにみればそうですが、人口に紐づけるのもかなり乱暴だと思います。
人口が減っても婚姻率の低下で(独身)世帯数が増加すれば必要物件数は増えるわけです。
不動産価格はその地域の家賃相場と物件の魅力で決まるので、人口が減る分、利便性のより高い場所に集中して世帯数が増えていく二極化の傾向もあるので、きちんと場所で物件の魅力(便利で住みやすい等)を持っていれば物件価格を大きく損なうリスクも低くなります。
ちなみに「とはいえ築30年~40年の不動産は価値がほとんどない」とも聞きます。
これも地域や物件レベルの問題です。
不動産の「建物」は経過年数に比例し減価償却される(会計上)のですが、これは「株式」という資産クラスにはない不動産特有のものです。
不動産ポータルで「都内、マンション、築30年以上」とかで検索しても、二束三文にの原価割れ物件が出てこないのはそれだけの物件価値があるからです。
昨今の災害が気になるなか「持ち家はリスクを背負い込む」という意見もあります。
これも株式投資も一緒で、不動産所有に災害リスクがあるように、株式を持ってもその会社に不祥事や思わぬリスクで株価が下がって損失を抱えることもあれば紙切れになりえます。不動産はまだ土地価格がゼロにならないだけましともいえます。
昨今、インフレや建築資材・人件費の高騰で、新築供給価格(m2当たり)が上がっています。
中古物件の価値は「新築販売価格」に連動するので(新築と中古で、築年数以外の条件が同等なら、中古が格安だと中古に需要が流れ中古物件の価格が上がる)ので、新築供給が高止まりする以上、中古だけどんどん二束三文にまで下落するとも思えません。*地域によります
持ち家の資産価値の結論
こうしてみると、持ち家が負債かどうかは「物件評価額が住宅ローン残債を超えるか否か」という負債の定義に即した結果次第です。
株式も不動産も、どちらも資産にも負債にもなりえますし、不動産の場合は、負債となるならば賃貸のが良いというのは、その通りだと思います。
株式は分散させれば1つ1つはインパクトは少なく損切もできる一方で、不動産はそういった処理が難しい投資ですからね。
ですがサラリーマンの属性を活かせば資産形成で有利に働くポテンシャルがある(不動産投資の貸付金利より安く、減税対象になるなど)を使えます。
また、株価や企業業績は10年後の予測は難しいですが、不動産価格に連動する地域発展性という点は、現在の都市計画を調べればある程度の見通しはわかるので、10年先の出口は株よりはまし、という点も不動産は資産形成に有効だと思っています。
終わりに
ちなみにもし僕がいま現役で賃貸に住んでいたら、今の金利の行方と不動産価格の現状(都内は割高)で少し買え控えマインドが優勢だと思います。
なので気長に中古物件で「外れないもの」を探し続けていると思います。
ただ、住宅ローンで(ましてはフルローンで)買えば、元手資金を減らさないので株式投資にまわす資産も損ないません。
なお家賃補助で賃貸有利という人もいますでしょうし、僕のように転勤で持ち家を賃貸にだして丸々収益を得るケースもありえます。
完全リタイア民の僕は住宅ローンを組めないので、そんな資格のある現役の人には
「先入観を持たずにいろいろな可能性を考えたほうがお得だ」
とお伝えしたいのが趣旨です。
ランキングも参加してます。今回の論点に賛同いただければポチっとお願いします!