サラリーマンが懸命に働いて給与が増えると、累進課税により税率も上昇し、最終的には最大55%(所得税45%+住民税10%)の課税がかかります。
一方で、働かずに上場株式の配当金で収入を得る「配当金コース」のFIRE実践者は、どれだけ配当金を受け取っても、約20%の税率(所得税+住民税)で済みます。
さらに、「住民税非課税世帯」に該当すれば、国民健康保険料や国民年金保険料の減免、医療費の自己負担軽減、さらには保育料や大学授業料の無償化といった公的支援を受けられる可能性も出てきます。
これは「源泉分離課税」の仕組みを活用することにより実現可能な方法です。
2024年の税制改正により「住民税の申告不要制度」が廃止された今、「配当金+住民税非課税世帯」という組み合わせは、強気の株式市場や堅調な企業業績を背景に、今後ますますFIRE民にとって有力な選択肢になると考えています。
※ちなみに、僕は配当金に頼りきらず資産所得の分散を図る「収入源分散コース」なので、配当比率は高くありませんので、ここでいう“最強”には当たりません。
今回は、その“最強説”のある「配当金コース+住民税非課税世帯」について詳しく解説します。
配当金でFIREメリットを出す環境設定
すでにご存じかもしれませんが、「配当金コース」でFIREを進めるには、税制を正しく理解し、制度を活かす環境づくりが欠かせません。
まず、証券会社で「特定口座(源泉徴収あり)」を開設することが基本です。
そのうえで、新NISAを活用して高配当株を確保し、余力があれば特定口座でも上場株を購入していくのが王道です。
仮に2億円の資産を上場株式で運用し、配当利回り4%を得た場合、年間800万円の配当金が得られます。そこから20%の源泉徴収が差し引かれても、手取りは約640万円。新NISAの非課税枠も活用できれば、さらに手残りは増えることになります。
配当金にかかる課税方式は以下の3つが選択可能です。
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総合課税
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申告分離課税(複数口座の損益通算などで活用)
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源泉分離課税(申告不要)
FIRE民が注目すべきは③「源泉分離課税」です。
これを選択すれば、確定申告の必要がなく、配当金は「課税済み」として扱われ、所得として加算されません。仮に他の所得で確定申告を行っても、配当を申告に含めなければ同様の効果が得られます。
これにより、「住民税非課税世帯」として認定される可能性が高まります。
住民税非課税世帯とは
住民税は、都道府県および市区町村が提供する行政サービスの財源として、住民が広く負担する税金です。課税は「所得割(前年の所得に応じて決定)」と「均等割(定額課税)」の2本柱で構成されています。
住民税がかからない「非課税世帯」になるには、「所得割および均等割の課税対象とならない水準の低所得者」として認定される必要があります。
区市町村でこの認定基準は異なりますが、僕が住む地域(23区内)は、前年の合計所得金額が、
・独身(同一生計配偶者及び扶養親族がいない):45万以下
・独身や既婚で扶養親族がある場合:35万x(本人+被扶養者数)+31万
となると非課税世帯となります。
実際の適用可否をイメージしづらいかもしれませんので、以下では制度マップをもとに解説します。
住民税非課税に向けた税制度マップ
FIRE民が非課税世帯を目指す際の要点は、「合計所得金額」を基準とすることです。たとえば、23区に住む独身者であれば、この金額が45万円以下である必要があります。
「合計所得金額」は、事業所得・不動産所得・雑所得などの「総合所得」に加え、上場株式の配当所得や譲渡所得などを含む金額です。
したがって、給与を得ている会社員はこの基準をすぐに超えてしまいます。また、FIRE民であっても、FXや仮想通貨取引で得た利益(雑所得)は所得としてカウントされます。
そのため、「上場株式等の配当所得」を源泉分離課税(申告不要)として処理すれば、それは「合計所得金額」に含まれず、非課税世帯の要件を満たす可能性が高まります。
45万円のシュミレーション
なお、FIRE民であっても、所得金額を年間45万円以下に抑えるのは簡単ではありません。
しかし、「所得金額」は「収入金額」ではなく、必要経費や控除を差し引いた後の金額です。
事業による収入ならば、所得金額=収入金額-必要経費。
年金収入ならば、年金所得=年金収入-公的年金控除額。
*それぞれ年間単位です。
例えば、65歳の独身者が年金収入155万円なら、公的年金控除(110万円)後の所得は45万円ちょうどとなり、住民税非課税世帯の基準を満たします(東京23区基準)。
パートなどで得る「給与収入」も、給与所得控除を考慮すれば約100万円程度までは非課税の対象になりえます。
ただし、これらはすべて「合計所得金額」として合算されるため、配当金は申告せずに源泉分離課税で処理することで、非課税の余地を残すことができます。
※かつて存在した「住民税の申告不要制度」は廃止され、より慎重な対応が求められるようになっています。
配当金生活のFIREのメリット・デメリット
ここまで見てきたように、「配当金コース」は、複数の所得を持つ「収入源分散コース」よりも税制面で有利に働くことが多いです。
ただし、配当金には事業所得のように「経費」を差し引くことができません。先物取引などで経費化の余地があるケースもありますが、現物株取引のみで構成する場合、飲食や通信費などを経費とするのは難しいのが実情です。
一方、事業所得や不動産所得、さらには雑所得に該当する収入であれば、一定の条件下で経費化が可能です。FXや仮想通貨取引であっても、複数の雑所得(経費有で赤字)があれば相殺(内部通算)による節税も可能です。
住民税非課税世帯のメリット(まとめ)
住民税が非課税と認定されると、以下のような恩恵が受けられる可能性があります:
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国民健康保険料:最大7割減額
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国民年金保険料:全額〜4分の1免除
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医療費:高額療養費制度の自己負担上限が軽減
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保育料・大学授業料の無償化対象
これらの制度は申告主義に基づいており、「該当者です」と自身で申請する必要があります。
ちなみに僕の場合は、完全リタイア後に国民健康保険へ加入し、住民税非課税世帯としてその恩恵を受けています。本来であれば年額7.7万円ほどの保険料が、7割減額により1.7万円弱に抑えられています。
その他、僕にはメリットがありませんが保育料や大学授業料の無償化や、高額療養費制度(自己負担上限額は年齢や所得に応じて変わる)で、自己負担上限額は同月内は最大数万円で済んだりします。
終わりに
今回、FIRE生活における「配当金+住民税非課税世帯」の強みを、制度の基本構造に照らしながら整理しました。
もちろん、配当金一本に絞ることは他の投資機会を逃すリスクもあり、「配当金コース=万能」というわけではありません。
僕自身、「遊びか仕事かわからない日々」を送りつつ、そこで生まれる利益を経費化することで生活コストを最適化する道も模索しています。
FIREには「生きがい」や「生活設計」といった側面も重要ですが、それにマッチする「投資&税務設計」もまた欠かせません。
また、住民税非課税世帯であるからこそ、地域活動やボランティアなどで社会に還元する姿勢も持ちたいものです。
次回は、この基本構造を踏まえ、僕が今年の確定申告で実践した具体的な節税戦略について綴っていきます。
※本記事は正確を期すよう努めていますが、税制や制度は変更される可能性があります。最終的な判断は専門家にご相談ください。
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