アーリーリタイア後の暮らしでは、意外にも多くの場面で「職業欄」に記入する機会があります。僕自身、これまでの10か月間に、
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ポイントカードの申込書
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確定申告書
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金のジュエリー売却に伴う物品売買契約書
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団体への会員登録
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海外旅行時の出入国カード
と、少なくとも5回は職業を書いてきました。
この「職業欄」、何も考えずに書くと、時に冷や汗もののトラブルを招くことがあります。
職業欄に職業を記載する心構え
「無職ってニートみたいで恥ずかしいから、なんかそれっぽい職業を書いておこう」、なんて声も時々聞きます。
ですが、職業欄を書かせる理由は相手側にもあり、たいていは審査や確認といった目的なので、こちらの主観やイメージだけで適当に書くと、不審者扱いされることもあります。
たとえば、もっとも緩いのはポイントカードの申込み。無料で誰でも作れるようなものであれば、仮に「さすらいのダンサー」や「お笑い芸人見習い」といったジョークで書いても大きな問題にはなりません。
ですが、クレジットカードの申込みのように審査があるものや、法律に基づいた申告・契約の場面では、実際の職業とかけ離れた内容を書くのは問題です。虚偽申告となり、後々面倒なことになります。
無職と書いても大丈夫なもの
リタイア後の確定申告では、「職業:無職」と記載しました。申告では、収入や支出を個別に正確に書くので、職業が“無職”であっても問題にはなりません。むしろ正直に書いたほうがスムーズです。
ただし、事業所得がある場合は注意が必要です。職業ごとに事業税の税率が異なるため、例えばフリーランスで仕事をしているなら「無職」ではなく「ライター」「投資業」など、実態に即した記載が望ましいです。
一方、僕が金のジュエリーを売却した際の「物品売買契約書」では、「無職」とは書かず「自営業」と記載しました。
金の買取は、マネーロンダリング防止の観点から身元確認が厳しく、「無職」と書くと不審に思われ、調査対象になることもあります。実際、金は紙幣と違って番号による追跡ができないのをいいことに、不当に入手した換金性の高い金を使って金銭を得る犯罪もあります。
無職と書くと「疑わしい取引に介在してるのでは?」と調査対象になりえます。
「無職」と書いて痛感した、海外での入国審査の怖さ
もっともヒヤリとしたのは、海外旅行での出入国カードです。
これには職業欄があり、内容はパスポートとともに入国審査官によってチェックされます。
審査官が見ているのは、滞在目的・滞在先・職業などを総合して、その人物が、
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安全上の脅威ではないか
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違法物を持ち込んでいないか
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不法就労しないか
を判断するためです。
怪しい場合、入国審査官が対面で質問し厳しくチェックします。
僕はリタイア後、いくつかのアジアの国を観光で巡ったあと、アメリカに入国しました。
その際、出入国カードの職業欄に“None(無職)”と記載してしまい、入国審査でかなり細かく質問されました。
「働いていないのに、なぜ短期間で複数の国を渡り歩いているのか?」と。
リタイア生活で移住先の下見を兼ねていたので、正直にそう伝えると、「無職の男が、滞在しながら不法労働をするのでは?」という疑いを持たれたようです。
過去の職歴、収入源、滞在先、行動予定まで事細かく聞かれました。
帰国便やホテルの予約情報などを提示し、働く意図も動機もないことを丁寧に説明した結果、無事入国できましたが、冷や汗ものでした。
入国拒否となれば、その履歴が残り、今後の再入国に支障が出ることもあります。
国ごとの注意点と、女性が受ける特有の視線
入国審査が厳しい国は、アメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリア、中東などです。
特に女性の場合、「現地に彼氏がいる」「一人旅」「派手な服装やメイク」などが重なると、偽装結婚や不法滞在の疑いを持たれやすくなります。
また、ジャーナリストやライターなど、政情不安な国では入国拒否や審査対象になりやすい職業でもあります。たとえ観光目的でも、内容次第では「労働ビザが必要」と言われ、入国拒否になるケースもあります。
終わりに
「無職ってダサいから」「かっこいい肩書きがいいから」と、自分本位な理由で職業欄を適当に記入するのは危険です。
書類の目的や、相手が何をチェックしているかを理解し、自分の実態に沿った、かつ相手にとって「無害で安心できる」職業の表現を選ぶことが、トラブルを防ぐコツです。
リタイア後は「無職=何もしていない」ではなく、自分の実態の範囲で、不利のない記載をしたほうがいいですね。