いつの間にか富裕層?~中間層が感じる違和感

2025-05-30

資産額

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近年、「富裕層が増えている」という報道を目にすることが多くなりました。

なかでも注目を集めているのが、野村総合研究所のレポートに登場する「いつの間にか富裕層」という表現です。

これは、贅沢な暮らしをしているわけでもないのに、資産だけが膨らみ、富裕層に分類されるようになった人々を指しています。

この2年で“富裕層の予備軍”ともいえる人たちが急増しているわけだが・・野村総研が調査を行ったところ、年齢は40代後半から50代が多く、職業は一般の会社員が目立つという。株式の長期投資、従業員の持株会、NISAなど、投資をコツコツ続けてきた、いわば“元庶民”である。「元庶民→富裕層の予備軍」といった具合に、「人生ゲーム」でいえば着実にゴールに近づいている人たちを、野村総研は「いつの間にか富裕層」と呼んでいる。

隣の同僚が億万長者に? 知られざる「いつの間にか富裕層」の実態

一見、社会全体が豊かになっているようにも映りますが、この現象にはどこか見過ごせない「構造的な違和感」を感じています。

今日はその違和感を、数字のマジックや社会構造の変化から読み解いてみたいと思います。

数字のマジック:「富裕層」の定義の変化

まず押さえておきたいのは、「富裕層」という言葉の定義が、相対的で変動的だということです。

野村総研の基準では、純金融資産が1億円以上を「富裕層」、5億円以上を「超富裕層」と定義しています(*純金融資産なので不動産は含まれません)。

しかし、近年の株価や不動産の上昇により、特別な努力や成功体験がなくてもいつのまにか資産が増えた人たちが多く含まれるようになっています。

こうした新しい「富裕層」の実態は、

  • 資産が膨らんでも現金収入や現預金は増えているとは限らず「実感なき帳簿上の富裕層」にすぎない、

  • インフレや税制・相続制度などにより、その「富」は流動的かつ不安定

といった状況を抱えています。

よって、「富裕層が増えた」という、言葉に過度な安心感や羨望を抱くのもバブルに踊らされているわけで、表面的な数字がもたらす錯覚だという冷静な認識も重要です。

「持つ人」が得をする構造は拡大

そして注目すべき現実は、資産を「持つ人」と「持たない人」の間で、経済的な差がますます広がっているということです。

とくにコロナ以降のインフレによって、株や不動産を保有していた人々は大きな利益を得る一方で、給与所得に依存している人たちは物価の上昇や増税に直撃され、実質的な生活水準が下がる結果となっています。

このように、「資本所得 > 労働所得」という構図が加速する中で、

  • 「働くこと」よりも「持つこと」に価値が置かれる社会へと変化し、

  • 「どれだけ持っているか」が自由に生きる力に直結している、

ということもあり、FIREやセミリタイアを志向を増長させる源泉になってもいます。

質素な暮らしの「静かな富裕層」も増加

ただし、富裕層と呼ばれる属性の人も、従来のように派手な暮らしを選ばず、質素なライフスタイルを貫く人たちが増えています。

地方への移住、ミニマルな暮らし、低支出によって、資産を多く持ちながらも「あえて普通に暮らす」・・という「見えない富裕層」の存在が静かに増加しているように感じます。

つまり、「いつの間にか富裕層」とは、贅沢よりも質素な生活と自由を選んだ人々の象徴だと思えます。

FIRE実践者の多くもこのカテゴリー(富裕層や準富裕層)に属しており、倹約生活を続けながら見た目からは分からない「新しい階層」を静かに形成しているのだと言えます。

社会の分断と「取り残され感」の正体

こうした社会構造の変化が進むなかで、SNSやメディアでは「誰でも自由に生きられる」といった幻想が流布されやすくなっています。

しかし、現実には特に金融リテラシー(教育)や実家が太い(家族背景)等、スタートラインの格差も存在するわけで、そうした「見えない壁」によって、同じように自由を手にすることができない人たちも少なくありません。

インバウンドの増加でモノやサービスの価格が上昇する傾向も顕著で、「円で暮らす自分たち日本人は貧しくなった」という実感もしてしまいます。

こうした状況で、とくに中間層の人々は、自分だけが取り残されているような感覚に陥りやすくなるわけです。

終わりに

「いつの間にか富裕層」が増えている社会現象は、それ自体が社会の豊かさを示すものではなく、むしろ「見えにくい格差の拡大」を映し出していると言えます。

資産価格の上昇、構造的な不平等、貨幣価値の下落が起きても、「富裕層」という定義がずっと変わらず1億円で固定されれば、帳簿上の数値が「富裕層の膨張現象」というバブルを作り出してしまいます。

実感のある豊かさではなく、「富裕層」という言葉先行の状態なので、「いつのまにか富裕層が増加中」というニュースはポジティブな変化と捉えるより、「静かなる格差拡大」といった警戒感で捉えないと、危険だなと思っています。


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自己紹介

2022年3末に完全リタイア。FIREの自由で創る”自分らしいセカンドライフ” としてFIRE-Driven Lifestyle Innovationをテーマに、日々の気づきや経験を発信して精神的に豊かなFIREを応援します。
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