先日老齢の母親から「懇意にしている保険外交員と面会する」と聞き、僕もその面会に同席しました。
面会の目的は事務手続きであって営業ではないと聞いています。
ですが保険外交員がわざわざ顧客訪問をするのに何ら営業をしないというのも変です。
もし無理な営業を受けると判断力に欠ける母親は契約をするのではと心配です。
ということで僕は面会に同席したのですがその席での「出来事」を今日は綴ります。
結論としては「無意味な提案に乗らずに良かった」わけですが、同時にかなり「ゆるい提案」で、これが別の場であったら一発で顧客から「出禁」となるのではというオチです。
保険外交員のおばちゃんの存在感
母親宅に来たのは70歳近いベテラン外交員のおばちゃんとアシスタント(50代?)の営業レディーです。
おばちゃんと母親は20年以上のつきあいのようで、おばちゃんは早速ちょっとしたお土産を母親に渡しつつ「元気でしたか?」「懐かしいですね~」と親しさ全開です。
そのトルクの緩め方が怪しさ一杯に感じましたが母親はまんざらでもなさそうです。
やはり人と接触することの少ない老人にとって人懐っこい営業トークには吸い込まれるのでしょうね。
そんな仲良しアピールネタが尽きる前の空気感を読んで営業レディーが口火を切ります。
「お話も尽きないとは思いますが・・」と今の契約状況のリストを机に出して確認作業から入りました。
漫才組んだらよいコンビと思いましたが、きっと裏ではおばちゃんの厳しい指導で間合いやタイミングを取っているのでしょう。
そんな想像をしながら営業トークを聞きました。
営業トーク
さて、その営業トークからわかった全体のロジックは、
総額で2万円/月の保険料という現状
↓
保険内容は今の時代には古いものだ(問題提起)
↓
新たな保険で組み合わせると内容も刷新され割引も適用される(提案)
といった流れです。
やはり営業が目的です。
提案力の疑問
ですが提案のポイントは「新たな保険に組み替えれば割引率が高く内容も時代に合う」ということですが、果たしてそれが母親にとってメリットになるのかわかりません。
保険の特徴やら新しさをという商品アピールされても、それが母親のニーズに合うのか、どういう問題解決になるのか、そのポイントがわからないのです。
そこで代わりに老齢の母親のニーズを整理して、
・老齢ゆえ病気と闘う積極的治療に支給されるより、癌等の診断が出るだけで一時金が出るほうがよい(治療しないと支給されないようでは意味がない)
・老齢ゆえ入院が長期化するリスクもある(長期滞在でも制限の無い方が良い)
・先進医療等も積極的に受けるとはいいがたい
・でも通院するようなことはありうる
など、母親の固有の年齢、体力、罹患する病気のリスク(親戚等の罹患も鑑みて)や可能性、罹患した場合の治療方針など、やはり個人差はあると思うのです。
こうしたリスクや確率を踏まえ、契約中サービスより新規提案がいかに優れるかで説得を受けたいわけです。
ただ現実は、顧客(母親)の目線でのニーズや問題解決型の提案ではなく、保険外交員が売りたい商品を説明するだけのスタイルでちょっとばかり僕はイラっとしてしまいました。
何しろ魂胆は「旧サービスを解約し新サービスを契約することで新規受注成績にしたい」ということでしょう。
そんな下心も見透かしているので困ったチャンなる提案でした。
悪かろう高かろうの提案内容
結局、今の保険に比較し新規提案は「悪かろう高かろう」となりました。
なぜなら保険は年齢が高いほど高額になるので、新規にサービスを組み直して高い価格になりそれに高い割引率を加えても、10年前に契約した現サービスをそのまま維持するほうが値段も安く内容も優れるのです。
でもこれ、価格シュミレーションをして新規提案の優位性を顧客ニーズに照らし合わせて整理する・・なんてことは訪問前にできることです。
百歩譲って顧客のニーズがわからないなら、幾つか仮説をもって「こんな仮説を持ちまして、したがってこんな提案はいかがです?メリットは〇〇〇ですよ・・」と、仮説を連打打診してニーズを把握しながら解決提案すればよいわけです。
仮説も顧客ニーズへの価値訴求もなく、単に商品メリットをいくら聞かされても、「はぁ、そうですねぇ」で終わってしまいます。
法人営業なら一発出禁
これは業界カルチャーによるかもしれませんが、世の中の法人営業であればわざわざ顧客の時間を割いて面会までして「悪かろう高かろう」の提案をしてしまったら即刻「出禁」となります。
本来は、顧客の問題点やら業界の動向やらを深く理解してニーズに合った提案をするのが営業の資質であって、自分が売りたい商品をアピールする押し売りスタイルは「パートナーとして存在価値なし」とみなされてしまうのが現実です。
という感覚でいると、この提案は正直「うわーゆるぅっ」と思ってしまいました。
まあ保険外交員のすべての方がこのようなスタイルではないとは思いますし、老人にとって「お話相手で良い」としておつきあいで契約するなら、それはそれである種、ニーズには合うのかもしれませんが。。
終わりに
ということで、振り返ると、もし母親ひとりで対応していたら契約してしまったでしょう。
営業トークとして「手厚い保証で今の時代に合ったサービスだし、お子さまに迷惑かからないよう、この値段ですが安心を買うと思って契約しましょうよ!」なんて言われたらイチコロになって母親はサインをしていたかとは思います。
たとえそれが今よりも「悪かろう高かろう」の契約でもそれを見破れず営業レディーの「新規受注」に資することになっていたわけです。
僕はアーリーリタイアをしてこうしてすぐに立ち会えて良いのですが、働いていたらこうしたガードはできません。
きっと世のなかには老人が不必要な保険を契約してしまう事例も沢山あるとは思います。
保険外交員が悪だとは言いませんが(良い提案をする方もいるとは思いますが)、ぜひ老齢の親がいる方は保険の契約状況など気にかけてあげてください。
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