リタイア後の資産延命のため老後もずっと投資を続けたい人は多いと思います。
ですがいくら投資を続けたいと思っても、認知症になると株式・投資信託・不動産などの運用や処分が能力的に困難になったりします。
また、金融機関側も契約者が認知症であると知れば、本人の資産保護のため資産凍結(家族や親戚が勝手にお金を引き出せないよう取引制限する)をします。
こうした対応に備え「成年後見制度」があり、僕はその「任意後見人」として親戚の財産管理をした経験があります。
ですが成年後見制度はまるで「資産延命の目的にはそぐわない」ということをそんな経験から感じたので、今日はそれを綴ります。
成年後見制度の概要
そもそも成年後見制度というのは、認知症によって判断能力が不十分になってしまった本人(被後見人)を保護するための法的な枠組みです。
その目的は「財産管理」と「身上監護」にあります。
なので「財産管理」を超えて「お金を増やす」といった積極的な資産運用などはできません。
それを理解するうえで、まず登場人物を説明します。
成年後見制度の登場人物
主役となる本人(認知症対策のため制度を使う人)がいて、その人をサポートする人物として大きく2つがあります。
それは、
①認知症になってしまった後に家庭裁判所が選定する「法定後見人」、
*主に司法書士、弁護士、福祉の専門家、その他の第三者など
②認知症になる前に本人が任意に選定できる「任意後見人」
*家族や信頼できる人で、本人が選任し公正証書により契約を締結する
という2つです。
なお、実際にこの枠組みが稼働開始するのは本人が認知症になってからです。
そして、後者の任意後見任を選んでも、任後見任を監督する「任意後見監督人」が家庭裁判所によってえらばれます。それは司法書士や弁護士などの監督人です。
登場人物との座組み
本人となる方が独身であったり、独り身(夫婦子無しであったが一方の伴侶が亡くなることで独り身になる)であるなどでは、家族による「身上監護」もないので、やはり財産管理も身上監護も、両方が密に必要になります。
すると、そうした独り身の人ほど、見知らぬ第三者が認知症になってから家庭裁判所で決められるより、自らの意思で、信頼できる任意後見任を選び、認知症となった以降の対応を託すということが現実的ですし、そうして望まれて対応したのが僕のケースです。
僕のケース=任意後見人
僕のケースでは、親戚のおばさん(パートナと死別し未亡人でかつ子供なし)がまだ認知症になる前に、自分の先行きの「財産管理」と「身上監護」を案じて僕を選任しました。
経済状況としては、概ね、受給中の年金で生活費をほぼ賄えていて、不足分は現預金を取り崩せば余生は大丈夫というものでした。
そのため、伴侶と死別後に所有していた区分マンションを売却して現金化し、それを主にした元本保証の金融サービスでしばらく運用していました。
その後、体調不良や少し軽度の認知症となった段階だった70代半ばに、全ての金融サービスを解約し、普通預金として1つの銀行の1つの普通預金口座にいれました。
そこで年金等の入金から全ての支払いを集約させました。
こうすることで通帳1つで管理可能で管理業務が楽となるからです。
認知症が発症後の対応
その後、認知症が進み、その旨の診断書を入手しました。
同時に関連資料として、僕が任意後見任として任命されることを記した公正証書、その他の申請資料を取り揃え、家庭裁判所に提示しました。
数週間後、裁判所が任命する「司法書士」が監督人としてつくことが決定し、僕は任意後見任の業務を開始しました。
やることは定期的な財産管理に関する目録書作成や、通帳の入出金管理、資産の増減を記録などです。
施設入居のための調整や契約業務もします。
一旦入居すれば「身上監護」は老人ホーム側がやるので、僕が対応するのは「財産管理」だけです。
それも通帳1つの出入りなので極めて簡単です。
最初は後見人開始の関連報告書を作成したり、また頻度の高い報告が必要ですが、経過ごとに頻度も減ります。
ですが生涯、この対応を継続し続けなければいけません。
よって任意後見人は本人より若い人が適任なわけです。
成年後見制度の闇っぽい点
この業務は僕は無償労働になるわけですが、監督人である司法書士は業務サポート費用が必要となりました。
ほとんどの業務(家庭裁判所に提出するデータやフォーマット)は僕が作り、監督人は確認、承認、提出する業務で、年間でそこそこの費用がかかりました。
当然、それはおばさんの口座から出金負担しますが、資産はその分、目減りしていきます。
これが亡くなるまで永続します。
監督者も変更することは原則できませんし、変更しようがフィーが発生するのは避けられません。
若干、後見人制度という枠組みでの司法書士等へビジネスを創造し流すかの闇構造に感じました。
資産運用なら家族信託か
以上の通り、認知症発症後の財産管理業務であり、積極的に老後資金を延命させるべく資産運用をすることは成年後見制度は容認されていません。
ましては監督人もついているなか、本人の意思がないなかでお金を勝手に運用することは禁止されています。
なお、予め運用のガイドラインを作成して消極的資産運用をする場合は、その余地はあると思います。
ただし家族信託ほどの積極的な資産運用や処分などは困難です。
家族信託については別途記事にしたいと思います。
任意後見任の難しさ
認知症は困った病気で、その種類にもよりますが「レビー小体型認知症」と診断されたおばさんは幻聴や妄想が顕著となりました。
お金に関して「私の財産が使われている」といった被害妄想が出ていました。
そんな妄想を遠い親戚に話したので僕が疑われるなどし、せっかく無償労働で本人の利益を守るため最大限の努力をしながらも泥棒と思わるなどもありました。
これがいわゆる「相続する兄弟間で相互に不信に思い勝手に後見人を依頼することで疑念が生じる」といった世間でのアルアルも実感した次第です。
終わりに
以上の制度を踏まえ、改めて「老後資金延命したい」と独身や身寄りのない独り身の立場で考えると、やはり大事なのは資産の出口戦略です。
痴呆になっても、
・資産を増やしたりぎりぎりまで資産運用の方針に従って取り崩すなどを「家族信託(家族に限らず遠い親戚も信託できます)」を使い実行するのか、
・ほぼ現預金に近い形で保有し成年後見人を使って財産管理を中心に進める(身辺の世話は老人ホームを頼る)、
といった選択肢だとも思えます。
いずれにしても、独身者や身寄りがなく将来不安な場合、信頼できる親戚の若い方などとの関係を作っておくことがベターだと思えるので、エネルギーはそこに向って注いでいくことをFIRE後、同時並行で進めることが良いと思う次第です。
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